『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、元資生堂でマーケティング本部長を務めた北原規稚子さん(現 MICHI inc.CEO)が『新版「欲しい」の本質 人を動かす無自覚な欲求「インサイト」の見つけ方』を紹介します。
前職でマーケティング本部長を務めていた私にとって、本書『新版「欲しい」の本質』は、まさに“想いを翻訳してくれる一冊”でした。私は感性・感覚的に人の心の動きを察知しアイデアを生み出すことを実践してきたタイプのマーケターで、それを属人的にせず再現性を高めるために言語化し、マーケティング組織のメンバーに共有することに苦労していました。
「ニーズではなく、インサイトを捉えることが大切」と繰り返し伝えていたものの、その“なぜ”や“どうやって”を理論的に説明することができず、もどかしさを感じていたのです。そんなときに本書と出会い、「インサイトとは何か、なぜそれが必要なのか」という問いに対して、経済的・心理学的背景のみならず、実践的かつ体系的にそのプロセス・手法までが気持ちがよいほどに言語化されており、すぐにメンバーに紹介しました。
特に、インサイトを見つけ、それをアイデアにつなげていくプロセスが具体的に紹介されている点は、マーケティング経験が浅いメンバーやどちらかというと理論的思考が強いメンバーに伝える際にも非常に助けになりました。
大松孝弘、波田浩之著『新版「欲しい」の本質 人を動かす無自覚な欲求「インサイト」の見つけ方』
本書では、仮説が一過性の「点」なのか、将来「線」になっていく欲求なのかを見極め、アイデアにつなげていくプロセスが詳細に語られています。これは、インサイトという言葉に“感覚的で難しそう”という印象を持っている方にこそ読んでほしい部分です。
