「増田宗昭をAIにできないか」。すべてはその一言から始まった
━━「AI増田宗昭」の開発の経緯を教えてください。
CCC創立40周年を記念した企画の一環として始まったプロジェクトです。しかし、その裏側には、技術の進化と向き合い続けてきた私たちの研究開発の歴史と、前例のない挑戦を成功させるための数々の試行錯誤がありました。
すべての始まりは、今から約1年前に遡ります。CCCが翌年に創立40周年を迎えるにあたり、経営メンバーが集まって「何をしようか」とブレインストーミングをしていたそうです。その中で、とある役員から「増田さんは若手経営者から会いたいとよく言われるが、時間がない。それなら、増田さんをAIにしたら面白いんじゃないか」というアイデアが生まれました。
その話が、40周年企画を担当していた広報部のもとに下りてきました。そして「AIをつくれないか」と、私のところに相談が来たのです。
━━三浦さんはもともとどういう業務をされていたのでしょうか?
それまでVポイントのデータを使った機械学習による購買予測や、画像などの非構造化データの解析をする研究をしてきました。そして、2022年末にChatGPTが登場したのを機に、「これは乗り遅れてはいけない」と、LLM(大規模言語モデル)の研究開発に軸足を移したばかりだったのです。
それまでは社内に閉じた独自のデータを使って回答を生成するAIを研究テーマとしていましたが、そこに「増田宗昭の知識」という具体的なデータを与えれば、彼らしい対話ができるAIがつくれるのではないか。これは、私たちが試したかった技術を実践する絶好の機会。まさに「渡りに船」で、早速プロトタイプの開発に着手しました。
書籍の知識と人格テストで「らしさ」を再現する
━━どのようにAIに人格を形成するなどしていったのでしょうか?
「AI増田宗昭」を開発する上で、核となった学習データは、増田が執筆した書籍『増田のブログ CCCの社長が、社員だけに語った言葉』です。
これは、2007年から2017年までの10年間にわたる社内ブログをまとめた書籍で、事業に関する具体的な話だけでなく、「顧客の五感を刺激する空間が重要だ」といった具合に、彼のものの考え方や哲学、抽象度の高い思考性が色濃く反映されています。私たちはまず、この書籍のデータをAIの「知識」のベースとして与えました。

