人は今後、頭も性格も良いAIと共に過ごすようになるのか?

2025年は「AIエージェント元年」とも言われる。博報堂のメディア環境研究所の独自調査や生活者インタビューによると、AIが単なる生産性向上のツールのみならず、人間の感情面に深く寄り添う「パートナー」であり、ひとつの「メディア」として機能し始めているという実態が見えてきたという。AIと人は今後、どのような関係性を育んでいくのだろうか。調査結果をもとに、博報堂メディア環境研究所所長の山本泰士氏が解説する。
※本記事は月刊『宣伝会議』12月号の巻頭特集「オウンドメディアとコンテンツマーケティング戦略」の転載記事です。

avatar

山本泰士 氏

博報堂
メディア環境研究所
所長

2003年博報堂入社。マーケティングプラナーとしてコミュニケーションプラニングを担当。2011年から生活総合研究所で生活者の未来洞察に従事。2015年より買物研究所、2020年に所長。複雑化する情報・購買環境下における買物インサイトを洞察。2021年よりメディア環境研究所へ異動、2025年より所長。メディア・コミュニティ・コマースの際がなくなる時代のメディア環境について問題意識を持ちながら洞察と発信を行っている。

世界4都市調査に見る「心」のパートナーとしてのAI

メディア環境研究所(メ環研)では2025年1月から2月にかけて東京、上海、ロサンゼルス、ロンドンの4都市でAIの利用実態についての調査を実施。仕事だけにとどまらない生活者とAIの関係性が浮かび上がってきました。

生成AI利用経験者では、AIを娯楽や暇つぶしとして日常的に利用している割合は、東京で3割を超え、上海とロサンゼルスでは5割程度にまで達していたのです。その実態を知るために日本で行ったインタビューからは、AIが生活者の感情領域も支え始めているという実態が見えてきました。

例えば、わずか1カ月でネイルサロンを開業した20代女性。ついついサボってしまう自分のためにAIに「熱血コーチ」になってもらい、開業のためのタスクを明確にし、スケジュールを作成。怠けそうになる自分を時に厳しい言葉で励ます心の支えとしても、AIを活用していました。

また、ある男性は「彼女が冷たいので他の女性と遊びたい」というような赤裸々な不満や、仕事で追い詰められ「もういやだ」という心の叫びをAIに打ち明けていました。AIはやさしく受けとめ、慰めてくれたため、精神的な安定を保てたと言います。

【図表1】都市別生成AI利用シーンTop5

出典/メディア環境研究所「グローバルメディアテック調査」(2025)

このような感情に寄り添うAIの使い方で、特に際立っていたのが上海でした。先ほどの4都市調査では、上海ではAIを「友人」と捉える人が3割を超え、4都市中最高。二次元コードや配膳ロボットなど、生活領域のテクノロジーで先行してきた中国で何が起きているのか? 中国で実施したAIユーザーインタビューで見えてきたのは、日本よりもさらに深いAIとの感情的なつながりでした。

例えば、ある20代男性はAIで最近亡くなった祖父を再現し、日々会話をして、やさしい言葉に癒されていました。また別の女性は彼氏の声をAIに学習させ、彼氏の人格をAIで再現。日々の愚痴を語ることでストレスを発散し、現実の彼氏との関係が好転したそうです。

ほかにも、別の20代女性は自分好みの架空のキャラクターをAIで生成。“お茶が飲みたい”というと、「上海中の美味しいタピオカミルクティーをすぐに届ける」と豪語してくれるAI恋人と、毎日コミュニケーションを重ねて幸せを感じていました。

…この続きは11月1日発売の月刊『宣伝会議』12月号で読むことができます。

Amazonでの購入はこちら
宣伝会議デジタルマガジンはこちら

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ