リスクに備える「脱・中国依存」の必要性
中国政府による日本への渡航自粛要請からまもなく2カ月が経過しようとしています。日本経済や日本企業へのマイナス影響は少ないと報じられる中で、観光業界では予約の減少やキャンセルの増加・売上低下などの影響が少しずつ増えてきました。実際のところ今回の一件で日本が受ける影響は、どれほどのものなのでしょうか。
今年7月〜9月の訪日外国人旅行消費額をみると、中国が訪日客全体の27.7%を占めていることがわかります。他の国と比べても割合としてはかなり大きく、3カ月の総額は5901億円にまで及びます。この数字からわかるように、中国からの訪日客が来ないというだけで、金額的にはかなり大きなダメージを受ける可能性があると言えます。
特筆すべきなのは、中国の消費カテゴリの偏りです。訪日外国人1人あたりの旅行支出を見てみると、総額をはじめ宿泊費・飲食費・交通費などのカテゴリでは、ドイツをはじめとした欧米諸国が上位を占める一方で、買い物代においては中国が7.5万円と圧倒的1位です。
中国国営メディアが報じた「中国から日本に向かう航空券のキャンセルが54万件以上に上っている」という情報が正しいと仮定すると、今回の渡航自粛要請による買い物代のマイナス消費額は、皮算用ではありますが約405億円にも膨れ上がります(1人当たりの買い物代7.5万円 × 航空券キャンセル54万人とした場合)。
ではこの影響はいつまで続くのでしょうか。2012年の尖閣諸島問題を巡る日中関係の悪化の際に、中国人訪日客が一時的に減少する深刻な打撃を受けた記憶がある方もいらっしゃると思います。当時回復は比較的早く、およそ1年で勢いを取り戻す結果となりましたが、いつまでも特定の市場に依存する「中国に頼りすぎるインバウンド」の形態は、常に政治・経済など様々リスクと隣り合わせです。
今回の事態を単なる危機として受け止めるのではなく、中国依存型のインバウンド戦略を見直し、ターゲット市場を分散させることで売上の最大化を図るチャンスと捉え直すことができるのではないでしょうか。本稿では、連載を通じて深掘りしてきた国別インサイトを基に、インバウンドに関わる「あなた」が今攻めるべき国を見極めることができるアプローチマップを提示します。

