「AIが生成したイメージ」が、お茶の間に出た日―テレビ朝日系『時代超越!タイムレスランキング』の演出から考える

透明性の話は「画面の上」に降りてきた

生成AIを制作に使うなら、何をどこまでAIで作ったのかを説明する。最近、この“透明性”が制作の周辺論ではなく、実務の要件として扱われる場面が増えてきました。

2026年の正月特番、テレビ朝日系『時代超越!タイムレスランキング』(1月5日放送)で、その透明性が、極めて分かりやすい形で現れました。全世代に愛されるNo.1戦国武将を、10代から80代まで各世代1000人、計8000人への調査でランキング化し、トップ20を発表する3時間スペシャルとして編成されています。

番組内には生成AIによる戦国武将たちや当時の光景などの映像カットが挿入され、そのカットには「AIが生成したイメージ」という短いディスクレーマー(※)が表示されていました。権利の関係でその画面をここで紹介することはできませんが、TVerで再視聴した範囲でも確認できます(1月19日までTver及びテレ朝動画で視聴可能とのこと)。

ここで起きているのは、「テレビが生成AIを使った」という事実だけではありません。生成AI映像が、隠されるのでも、誇示されるのでもなく、説明素材の一部として、ディスクレーマー付きで運用に組み込まれたことです。これを“たまたまの演出”として見過ごすと、次に起きる変化を読み違えます。

(※)ディスクレーマーという言葉は、薬事法やアルコール関連の仕事で見る機会があるかと思うが、多分に広告業界の言葉なので、テレビ業界の人たちはおそらくこのテロップのことをこうは呼ばない。今回は趣旨を紐解くために意図して広告用語で説明した。

何が変わったのか:生成AIが「説明素材」に常駐した

イメージ

『時代超越!タイムレスランキング』の放映画面イメージと視聴イメージをAIで生成したもの。画面内の「AIで生成したイメージ」の表示も含めてAIで生成している(Nano Banana Pro、自社ツール、Photoshopを使い筆者作成)。

『タイムレスランキング』は、ランキング/調査/解説/スタジオ進行という、テレビにとって定番の器です。そこで生成AI映像が使われた。これが象徴的です(※)。技術を見せるための実験枠ではなく、既存フォーマットの運用部品としてAIが入ったからです。

解説系番組は、説明のために多くの素材を使います。写真、図版、再現CG、イラスト、資料映像。生成AIは、これらに並ぶ「説明素材の選択肢」として入ってきました。言い換えるなら、生成AIは番組の主役ではなく、4番手、5番手の素材として常駐し始めた、ということです。

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生成AI時代のテクニカルディレクション
岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

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