大阪・関西万博の熱狂を支えた「非公式」の力 ― なぜ、つじさんのマップは愛されたのか?

2025年大阪・関西万博は、184日間の会期中に約2,557万名の来場者を記録し、成功裏に幕を閉じました。閉幕した今も、オフィシャルグッズの販売延長や公式キャラクター「ミャクミャク」のメディア露出が続くなど、その熱気が衰えることはありません。この熱狂を生んだ成功要因が様々と語られていますが、注目すべきは事象の一つに「SNSを通じたユーザー起点の情報拡散」があります。中でも、特異な存在感を放ったのがSNSを中心に拡散されたつじさんの「非公式マップ」の存在です。
 
もちろん、公式の地図も存在していた中、なぜ個人が作成したPDF地図がこれほどまでに支持され、さらにはコミュニティの熱狂を生んだのか。非公式地図の制作者であるつじさんへのインタビューから、企業のマーケティングやコミュニティ運営にも通じる「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」の真価を紐解きます。
 
※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の企画・取材・執筆は教育部修了生の櫻井恵が、取材は平松優太、佐藤良祐が担当しました。

なぜ「公式の地図」ではなく、「つじさんの地図」だったのか?

━━大阪・関西万博の開幕当初、来場者の間で「公式の地図が分かりにくい」という声が上がっていました。つじさんが作成した地図は、まさにそういった負の側面を解消する形で登場しました。そもそも、なぜご自身で地図を作ろうと思われたのでしょうか?

私も、最初は公式の地図を見て会場を回ろうとしました。しかし、地図上のパビリオンの場所には、記号があるだけで、地図の端にある説明を元に照らし合わせていく必要がありました。それにすごく手間がかかって、見づらいなと感じていて。なので、最初は自分が感じた不便さを解消するため、自分のためにつくったのが始まりでした。

実データ つじさんが制作した万博地図(Ver2.24)

つじさんが制作した万博地図(Ver2.24)

━━自分のためにつくった地図を、SNSで公開しようと思った動機はなんだったのでしょうか?

他の人も、自分と同様に地図について不便に思っているのではないか、と考えたからです。あとは、万博の開幕当初、「事前にパビリオンの予約をして参加しないと、楽しめない」という噂が広がっていたのですが、実際には海外パビリオンなどは、予約なしで当日に入ることができたり、少し並べば入れるパビリオンもあったりして、そのあたりの正確な情報が伝わるとよいなとも思いました。

━━当時、SNSでは他にも非公式の地図を公開している人もいましたが、つじさんのマップは「分かりやすい」「公式マップとは別の意味で見やすい」など、大変に支持されました。その要因をどのように捉えていますか?

万博の会場自体が横長の設計になっているのですが、多くの人の地図はそれをA3サイズにそのまま圧縮していたので、上下に余白ができてしまっていました。私の地図は、左上の部分を縮小して左下に配置し、メインの「大屋根リング」を最大化するようにレイアウト。A4やA3の定型サイズで印刷した時に一番見やすかったのが支持された理由だと思います。これは、私が本業では上下水道施設の設計をしており、業務の中で施工方法を説明する資料などを作成していた経験から生まれた発想でした。

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