ディー・エヌ・エー(DeNA)と松竹ベンチャーズが2月4日、「エンタメ×AI」をテーマにしたイベントを共催した。AI技術がエンターテインメント業界にもたらす変革について、スタートアップと事業会社が具体的な取り組みや今後の展望を語り合った。イベントは2部構成で、第1部ではファンとクリエイターの関係性を再定義するCtoCのAIネイティブアプリの現状、第2部ではAIを活用したコンテンツ制作やIPビジネスのソリューションがテーマとなった。
DeNAは会話型AIプロダクトを全方位で実証実験
第1部では、DeNAのAIイノベーション事業本部 事業本部長の住吉政一郎氏とOSHIAI CEOの嵐亮太氏が登壇。「AI×エンタメ」をテーマに、CtoC領域で展開されるAIネイティブアプリの現状と未来について語られた。
2018年からライブ配信事業に携わり、現在はAIイノベーション事業本部で複数のAIプロダクト開発を主導しているDeNAの住吉氏は、DeNAが仕掛ける「会話型AI」プロダクトを紹介。
具体的には、AIがユーザーに合ったシナリオを生成して英会話の発話訓練ができる「olelo」、AI仲人が通話内容を分析して推薦するマッチングアプリ「fromm」など、多様なプロダクトをトライアルしているという。住吉氏は、これらのプロダクト群に共通するコンセプトとして「会話型のAIを中心に、様々なジャンルのプロダクトをテストしている」点を強調した。
「推し活×AI」で生まれる新しいコミュニケーション
続いて登壇したOSHIAIの嵐氏は、前職のSHOWROOMでのメディア事業の運営や、VTuberマネジメントなどの経験を経て、2024年に「AI×エンタメ」をテーマに同社を創業。ライブ配信における「1対N」のコミュニケーションの次の形として、「『1対1を、AIによるリアルタイム双方向コミュニケーションで実現する』をコンセプトに推し活AIプロダクトを開発している」と述べた。
「OSHIAI」は、タレントやVTuberなどのクリエイターが自身の情報を学習させたAIを作り、ファンに提供するサービスだ。ファンがアプリ内で消費した通貨の一部がクリエイターに還元されるという、ライブ配信に近いビジネスモデルを採用している。これにより、クリエイターは配信時間外でもファンとの接点を持ち、新たな収益源を確保できる。
ライブ配信のような「1対N」のコミュニケーションが苦手なファンでも、1対1なら気軽に話しかけられるという利点もあるという。嵐氏は「普段あまりしゃべらない人が結構話しかけてくれる」といった現象が起きていると語る。
AIは「分身」か、それとも「推しの子」か
サービスにおけるAIの位置づけについて、嵐氏は当初の「分身」というコンセプトから転換を図っていると説明した。「分身」と定義すると、ファンが本人との違いを「粗探し」し、減点評価につながりやすい。
そのため、現在はより「クリエイターのDNAが反映された、『推しの子』に近い」という世界観を提示しているという。これは、本人とまったく同じではないが、「その推しのエッセンスを持った新しい子ども」としてファンがAIと向き合い、クリエイター本人とファンが一緒になってAIを育てていくという考え方だ。このアプローチにより、AIの不完全さも許容され、新たな関係性が育まれるという。


