AI時代だからこそ、効率より手触りを。大自然とジビエが導く、人間らしい食の時間─ジビエ名店4選

モノの機能性だけでなくコトの体験価値が、マーケティング戦略上、ますます重要度を増している時代。マーケター、クリエイターは常に新しく魅力的な体験を探しています。
 
そんな魅力的な体験をいち早く味わえるのが、東京のレストランシーン。本記事は「エクスペリエンス・プロデューサー」の肩書で活動する、ミリモルホールディングス代表取締役の河野貴伸氏が、マーケターやクリエイターの感性を刺激するレストランやバーを厳選し、いま訪れるべき場所として提案する連載企画です。
 
店舗やメニューの紹介、そのお店の「エクスペリエンス」の何に、マーケター・クリエイターが学ぶべきポイントがあるのか、魅力を解説いただきました。

ChatGPT、Copilot、Gemini──。生成AIが仕事の相棒になって久しい。企画書もプレゼン資料も、数秒で“それらしいもの”が出来上がる時代。効率という言葉が最上の美徳のように扱われる空気の中で、ふと立ち止まることがある。「いま自分の手で触れているものは、いったい何だろう?」と。

キーボードを叩く指先は、いつの間にか世界との唯一の接点になりかけている。目はディスプレイに張り付き、鼻は空調の乾いた風しか知らない。味覚に至っては、デスクで流し込むコンビニ飯がデフォルト。それで本当に、人の心を動かすクリエイティブが生まれるのだろうか。

私がここで提案したいのは、「ジビエ」と「自然の恵み」というプリミティブな食体験に、身体ごと飛び込んでみることだ。野山を駆けた鹿の肉には、飼料で育った家畜にはない“荒々しい生命力”が宿っている。土から引き抜いたばかりの根菜は、手のひらに泥の温度を残す。そういう“手触り”こそが、デジタルに浸かりきった感性を叩き起こしてくれる──少なくとも私は、そう信じている。

今回は「AI時代だからこそ、効率より手触りを」という旗印のもと、大地の恵みとジビエを軸に、クリエイターの五感をリブートしてくれる4軒を厳選した。

シェフ自ら山に入り、命をいただく。ミシュラン一つ星が示す「覚悟のジビエ」

LATURE(ラチュレ)/表参道

表参道という華やかな街の地下に、こんな店があるのか──初めて訪れたとき、そんな驚きが先に来た。渋谷の雑踏からわずか数分。階段を降りた先に広がるのは、森の気配をまとった静かなダイニング。ここが、ミシュラン一つ星を8年連続で守り続け、さらにサステナビリティの象徴であるグリーンスターまで獲得した「LATURE」である。

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シェフの室田拓人氏は、自ら狩猟免許を取得し、山に入ってジビエを仕留める料理人だ。「食材がどこから来るのか」を突き詰めた結果、自分の手で獲るという結論に至ったというそのストーリーだけで、すでに心を掴まれる。猟師としての眼と、フレンチの技法をフルに注ぎ込んだ料理は、クラシックでありながらも、野生の匂いがふわっと立ち上がる不思議な品格がある。

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