人的資本開示が制度化されるなか、「女性管理職比率」と「男女賃金差異」は、有価証券報告書で開示が求められている代表的な指標となっている。一方で、実務現場では「数値の読み方」や「説明の仕方」に難しさを感じる声も少なくない。
こうした課題を背景に、人的資本分析メディア「Career Reveal」が、両指標を業界横断で散布図化した「業界地図」を公表した。
業界地図からは、例えば以下のような配置(分布)が確認できる。
・女性管理職比率が低い一方、男女賃金差異が相対的に大きい領域(例:エネルギー資源)
・女性管理職比率が低い業界群(製造・装置産業系)が一定のまとまりとして分布する傾向
個社比較ではなく「構造」に焦点
女性管理職比率と男女賃金差異は、いずれも開示義務のある指標だが、単体で評価されやすい特性を持つ。
エフペリ代表取締役で、Career Reveal 編集長を務める早見信吾氏は、「この2つの指標は“良い/悪い”の評価に直結しやすいが、業界構造や人材構成、雇用慣行などの前提を踏まえないと誤解が生じやすい」と指摘する。
今回の整理では、個社間の順位づけではなく、業界単位に集約。職種構成や等級構造、採用・配置の前提などの「構造要因」に目線を移すことで、実務担当者の議論の出発点を整えることを狙う。
業界横断で見ると、
・登用は進むが賃金差異が動きにくい領域
・賃金差異は相対的に低いが登用が伸びにくい領域
といった傾向が浮かび上がるという。
「登用」と「処遇」は別の動きに
分析が示唆するのは、「女性管理職比率(登用)」と「男女賃金差異(処遇)」が必ずしも同じ速度で改善しないという点だ。
男女賃金差異は、職種構成や雇用形態、等級構造、勤続年数分布など複数要因の影響を受ける「結果指標」である。女性管理職比率が上昇しても、母集団である非管理職層の構造が変わらなければ、数値は直ちに改善しない。
また、登用は制度やその運用の影響が強い一方、賃金差異は職務設計や報酬テーブルなどの設計要素も関与するため、介入ポイントが異なる。
この点、早見氏は「登用と処遇は別KPIとして並行管理し、差がどこから生じているかを分解して説明することが重要」とする。
