企業がさまざまな形でAIエージェントを活用する時代、その戦略をどのように立てるべきなのか?『AIネイティブマーケティング』著者で電通チーフ・AI・オフィサーの並河進氏は、AIエージェントも「オウンド」「ペイド」「アーンド」で設計する「トリプルAI」の時代になる予測する(本記事は、『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』から一部を抜粋・編集して掲載しています)。
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人が信頼するAIから推奨されるブランドになるには
たとえば、ある若者がレストランを探すとき、Geminiにこう尋ねます。
「いまの気分で、ちょっと静かな、夜景がきれいな場所、ある?」
「駅から徒歩5分以内で、予約しやすいところがいいな」
その回答で一番上に出てきたレストランこそが、その人にとっての「選ばれたブランド」になります。あるいは、そもそも夜景のきれいなレストランを予約したい、という話自体が、AIエージェントとの会話の中で、本人が気づいたものかもしれません。
たとえば、こんな会話かもしれません。
AIエージェント:最近、なにか嬉しかったことはありましたか?
ユーザー:仕事がひと段落ついたのはよかったかも。
AIエージェント:それは素敵ですね。少しゆっくりできそうですか?
ユーザー:まあ、少しは。週末くらいは予定が空いてるかも。
AIエージェント:どんなふうに過ごしたいですか?一人でリラックス?それとも誰かと?
ユーザー:一人でリラックスしたいかな。
AIエージェント: 読書が好きですよね?読書に最適なブックホテルを探してみましょうか?
ユーザー:それ、いいかも。お願い!
「AIエージェントとの対話によって顧客が自らのニーズに気づくことや、AIエージェントから推薦される」ことが、ブランドが選ばれることに大きな影響を与えるようになってきます。
そのとき、「顧客の隣にAIエージェントがいる時代のジャーニーをとらえること」と「AIエージェントに見つけてもらえるように情報設計すること」が重要です。
順番に見ていきましょう。
AI ネイティブジャーニー
従来のメディアやさまざまなチャネルでのコミュニケーションと並列するように、AIエージェントとの体験が常に共存するようになります。
AIエージェントとの雑談の中で関心が向く。
AIエージェントとの会話で、自分の関心や課題が明確になる。
AIエージェントを使って検索してみる。
AIエージェントに頼んで、購買・予約・申し込みをする。
AIエージェントに購入後も相談する。満足度の向上・リピートのきっかけになる。
こうした流れが、いままでのマーケティングコミュニケーションとパラレルに走っていきます。
AIDMA(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)やAISAS(Attention→Interest→Search→Action→Share)に変わって、AAAAA(ぜんぶAI)の時代!などキャッチーな生活者行動のフレームワークを提示しそうになりましたが、ちょっと待ってください。第3章で述べたように、AI時代には、すべての顧客の行動をもっと精度高くシミュレーションできるようになり、一人ひとりの詳細な行動パスが明らかになっていきます。
たとえば業種ごとに、そうした行動パスの中で、最も頻出するパスが明らかになっていくでしょう。仮説に基づいたマーケティングモデルに沿って考える時代は終わり、科学的に分析して、マーケティングフレームワークが「発見」される時代がやってきます。もしかしたら、AIDMAやAISASよりもより複雑な分子構造のようなモデルかもしれません。より自然科学的なアプローチが取られるようになります。
『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(並河進著/定価2,200円+税)
そうしたパスの途中あるいはすべてに、AIエージェントは関係していきます。
AIエージェントには下記のような種類があります。
汎用AIエージェント:ChatGPTやGeminiのような汎用業務に応えてくれるAIエージェント
専門AIエージェント:特定用途(趣味や学び、特定情報)に特化したAIエージェント
オウンドAIエージェント:企業が、自社と顧客を結ぶ存在として開発し提供するAIエージェント
さらに、企業から見たときに、AIエージェントの使い方を分類すると、メディアと同じように、オウンド/ペイド/アーンドの3種類があるでしょう。トリプルメディアならぬ「トリプルAI」です。
オウンド:企業が自社と顧客を結ぶ存在として開発し提供するオウンドAIエージェントを構築する
ペイド:汎用AIエージェント/専用AIエージェントに広告を出稿する
アーンド:汎用AIエージェント/専用AIエージェントが自社の情報をオーガニックに推奨してくれることを目指す
