AI推進担当が「死なない」ための生存戦略─外部パートナーは「防波堤」に使え

生成AIブームの波に乗り、AI推進担当に任命されたものの、次々と届く営業メールと社内からのプレッシャーに押しつぶされそうになっていないだろうか。ツール選定の迷走、社内データの未整備、現場からの反発——AI活用の成否は「魔法のツール」ではなく、組織の整え方と立ち回り方で決まる。本稿では、失敗しないツール選定の原則から、外部パートナーの本当の使い方、そして担当者自身が消耗しないための戦い方まで、メルカリでAI戦略を担当するハヤカワ五味氏が現場目線で解説する。

AI推進担当になった途端、会社の電話やメールボックスが大変なことになっていませんか?

「弊社のAIソリューション導入で業務効率化!」 「独自の生成AIで社内データを活用!」 毎日のように届く営業メール。正直、どれも同じに見えますよね。

今回は、そんな有象無象のAIツール、AIコンサルの中からどうパートナーを選ぶべきか、そもそも利用すべきか、そしてもっと重要な「社内の不平不満から身を守るための外部活用術」について、ぶっちゃけた話をします。

ツール選定の基本は「巨人の肩に乗る」

まず、ツールの選定について。 世の中には独自のAIツールがたくさんありますが、私の考える選定基準はシンプルで 「巨人の肩に乗る」です。これに尽きます。

ぶっちゃけて言えば、多くの個別AIツールの中身は、OpenAIのGPTやGoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどのAPIをラップした(包んだ)ものがほとんどです。 であれば、よほど特殊な個別事情がない限り、本家本元である「ChatGPT Enterprise/Team」や「Gemini for Google Workspace」を直接契約して使い倒すのが、セキュリティ的にもコストパフォーマンス的にも最強です。一度使い始めたサービスがサービス終了などしてしまうと、なかなか撤退もコストがかかるので。

よくある失敗が、「ChatGPTを使ってみたけど思ったような回答が出ない」と言って、「もっと良い魔法のツール」を探して高額なツール契約をしてしまうパターン。私が口を酸っぱくしてお伝えしたいのは、回答の精度が低いのはツールのせいではなく、「社内の情報(≒コンテキスト)」が整備されていないからであることが大半ということです。

イメージ

例えば、社内規定が新旧めちゃくちゃに置かれていたり、最新のマニュアルが誰かのローカルPCにしかなかったりしませんか?そのように必要な社内情報にAIがアクセスできないという状況が、AI活用を一番阻害します。 古いマニュアルや間違った情報の載っているドキュメントなど「ゴミのようなデータ」を入れたら、どんなツールを使ってもゴミのような回答しか返ってきません(Garbage in, Garbage outと言います)。安易にツールを乗り換える前に、まずは社内のドキュメントを整理し、AIが読めるデータにする。そこにお金と時間をかけるべきです。

次のページ
1 2
ハヤカワ五味の大企業AI推進奮闘記
ハヤカワ五味(メルカリ AI Strategy)

1995年、東京都生まれ。高校生の頃からアクセサリー類等の製作や販売を行い、多摩美術大学入学後にランジェリーブランド「feast」を立ち上げる。2019年からは生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、2022年にM&Aでユーグレナグループにジョイン。同年に「feast」をブルマーレに事業譲渡。2024年よりメルカリ入社。現在はAI Strategyとして同社のAIエージェント導入プロジェクトを牽引する。

ハヤカワ五味(メルカリ AI Strategy)

1995年、東京都生まれ。高校生の頃からアクセサリー類等の製作や販売を行い、多摩美術大学入学後にランジェリーブランド「feast」を立ち上げる。2019年からは生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、2022年にM&Aでユーグレナグループにジョイン。同年に「feast」をブルマーレに事業譲渡。2024年よりメルカリ入社。現在はAI Strategyとして同社のAIエージェント導入プロジェクトを牽引する。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ