「SaaSの死」は本当か?Claude Coworkの衝撃と「画面」が要らなくなる日

前回のコラムでは、2月末に勃発した米政府によるAnthropicの排除にまつわる動きについて2回にわたり述べました。

ところがそれよりも前、1月から2月にかけても激動の出来事があったのです。Anthropicが発表した「Claude Cowork」によって、SaaS関連株が下落し「SaaSの死」などと取り沙汰されました。これらも振り返っておきたいと思います(状況は常時変動しています)。

電気社員が株式市場を動かした

「電気社員」の夢が(※1)、株式市場を揺らしました。

2026年2月3日、SaaS関連株がパニック売りに見舞われます。1日で約2850億ドル、日本円にして約42兆円の時価総額が吹き飛びました。Jefferiesのトレーダー、Jeffrey Favuzza氏がこの売りに「SaaSpocalypse」と名前を付けています。SaaSとApocalypse(黙示録)を掛け合わせた造語で、なかなかキャッチーなネーミングだなと感心している場合ではないのですが。

Atlassianは週間で35%下落、HubSpotに至っては50%超。日本市場にも飛び火して、Sansanが12.4%、freeeが9.0%の急落を記録しました(※2)。翌週にはOpenAIのFrontier発表、Claude Opus 4.6リリースと追い打ちが続き、累計の消失額は3000億ドル超、約45兆円に達しています。

直接の引き金になったのは、Anthropicが発表した「Claude Cowork」でした。1月12日にresearch previewとして登場し、30日には法務・金融向けのMCPプラグインが11本リリースされ、そして2月3日のパニック売りに至ります。

以前のコラムでも紹介したように「OpenClaw」は、個人の週末プロジェクトでした。Claude Coworkは企業のワークフローに直接入り込むプロダクトです。話のスケールが変わってしまいました。

さて、今回追いたいのは株価の上下そのものではありません。この騒動の底にある構造の話、つまりAIエージェントの実装が進むことで、人間とデータの間にあった「画面」(SaaSのUI)という仲介層が溶け始めているのではないか、という兆候を追ってみたいと思います。

※1: 前回(経営者は電気社員の夢を見るか)、OpenClawを起点にAIエージェントと「電気社員」への欲望について論じました。今回はその延長で、電気社員の影響が個人プロジェクトのレベルからSaaS産業全体に波及した話になります。

※2: 2月3日の急落に始まり、5日のOpenAI Frontier発表、6日のClaude Opus 4.6リリースと三連打が続いた形です。SaaS株パニックの経緯はCNBCの記事が時系列で追っています。

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生成AI時代のテクニカルディレクション
岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

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