経営判断を加速する。データの掛け合わせで、F2転換を実現する顧客第一戦略

顧客の価値観が多様化し、単なる価格訴求を超えた顧客体験の向上が喫緊の課題となっている家電業界。店頭体験やアフターサービスといった “価値” をどう伝え、どう長期的な顧客関係に変えていくか——その打ち手を模索していたエディオンが選んだのは、ドコモとの協業による「データ起点の顧客理解」への転換だった。

dポイント・d払い導入をきっかけに、自社データだけでは捉えきれなかった顧客像を、1億規模のドコモ会員基盤と掛け合わせることで再定義。来店頻度や競合利用、生活動線まで含めた “実態” を把握することで、新規獲得・育成・休眠復活まで一貫した戦略が見えるようになった。

現在は、顧客セグメント別の最適化に加え、店舗とデジタルをつなぐリテールメディア「エディオンAds」も開始。データ活用によって変化したマーケティングと顧客体験が小売の現場をどう変えたのか。エディオンの長谷川剛氏、秋田大輔氏と、NTTドコモの国井嘉秋氏、石田拓土氏に聞いた。

チラシだけでは届かない、新規層へのアプローチ

近年、家電量販店における競争の軸が変化している。単に価格や品揃えを競うだけでなく、購入後のアフターサービスや店舗での体験を含めた価値提供が求められるようになった。エディオンでマーケティング部門を統括する長谷川剛氏は、市場の変化を次のように語る。

「コロナ禍以降、『より安いもの』から『商品を買うことで生活がどう変わるか』へとお客様の視点が移っています。マスに向けた一律の販促から、いかに個人に合った価値を提供できるかが重要になっている。私たちエディオンが大切にしているのは、店頭での体感や購入後のアフターサービスといった『安心』や『楽しさ』です。この強みをいかに伝え、新規顧客を増やしていくかが課題となっています」

エディオン 上席執行役員 営業本部 マーケティング統括部長 長谷川剛 氏

家電量販店の主な集客手段といえば、新聞の折り込みチラシ。広範囲にリーチできる強力な媒体である一方で、その効果には偏りが見え始めていたという。

「調査の結果、チラシを見て来店されるのは、すでにエディオンが好きなファン層が中心であることが分かりました。新聞の購読率も下がる中、デジタルを活用していかに新規のお客様にリーチし、エディオンを想起していただくか。そこがこれからの大きな伸びしろだと考えていました」(長谷川氏)

自社データでは見えない動きを捉え、解像度を上げる

新規顧客との接点づくりに向け、2019年からNTTドコモと協業を開始したエディオン。まずは、dポイントやd払いの導入からスタートした。NTTドコモ カスタマーサクセス部の国井嘉秋氏は、当時の取り組みの狙いを振り返る。

「まずは、エディオン様の商圏内にいながらまだ足を運ばれていない方をターゲットに、『dポイントが貯まる、使える』というシンプルなアプローチで、はじめの来店動機を作ること。そして、そこから徐々にお客様のニーズに合った施策へと発展させていきました」

NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー カスタマーサクセス部 第一コンサルティンググループ 担当部長 国井嘉秋 氏

dポイント経済圏からのそれまでなかった顧客との接点創出による送客効果は高く、dポイント利用ユーザーは年々増加しており、エディオン全体の売上伸長率を超える月もあるという。また、ポイント利用を促進する20%還元施策の参加者は回を重ねるごとに購入額が増える傾向にあり、4回以上の参加者では1回の平均利用額が約15万円に達するという成果も出ている。

一方で、施策を進める中で新たな課題も見えてくる。一度来店しても、2回目の購入(F2転換)になかなかつながらないのだ。そこで両社は、1億IDに紐づくドコモのデータを活用して顧客をより深く理解するフェーズへと移行する。エディオンの利用頻度や他家電店の利用状況などによって、顧客を「9つのセグメント」に分類。ロイヤルカスタマーを指す「エディオンLover」から、年に数回利用するライト層、そして一度離反してしまった休眠層まで、それぞれの解像度を高めていった。

家電との併利用有無や利用動向を可視化し、戦略マトリクスにマッピング

長谷川氏は、ドコモとのデータ連携によって「自社だけでは見えなかった顧客の全体的な動き」がつかめるようになったと語る。個人を特定しない統計データとして、オンライン上の行動だけでなく、位置情報や店舗商圏データを含めた生活動線の傾向まで把握できるようになったためだ。

「一度離れてしまった休眠顧客の方を、自社単独の施策で呼び戻すのは非常に難しい。そこにドコモのデータが入ることで、様々なパターンに合わせて施策を設計・提案していただけるようになりました。

さらに、実際にデータ分析の結果がエディオンアプリの稼働実態と一致していたことには驚きました。それまでデジタル効果には懐疑的な面もあったのですが、結果の整合性を確認できたことで “信頼して使えるデータ” だと確信できました」(長谷川氏)

この「休眠顧客の掘り起こし」に対し、国井氏は「どこにパワーをかけるべきかを明確にする」ことが自らの役割だと説明する。

「AIも活用しながら分析で抽出したF2(2回目購入層)の特徴を教師データとして設定し、拡張した顧客に対して、どこにパワーを割くかまで含めて戦略を設計しました。休眠顧客を動かすのは、確かに非常にパワーが必要です。新規の方とは違い、『近所に競合店ができた』『引っ越した』などの、外的要因やネガティブな理由が存在するからです。しかし、『パワーが要るから』とご提案を諦めるのではなく、『休眠層とはどういう人なのか』を可視化することに私たちはフォーカスしています。

どのくらいの期間来店されていないのか、どういう理由が考えられるのか、実際に戻ってきていただける可能性はどのくらいあるのか。お客様の生活動線を科学し、『どこにパワーをかけるべきか』を明確にしてご提案していくのが、私たちの重要な役割だと考えています」(国井氏)

「外部からのアドバイスによって、自社だけでは得られなかった気づきを得ることができ、限られた原資の中での意思決定に耐える “判断材料” として大きな価値がありました。両社のデータがつながったからこそ、従来は難しかったF2育成や休眠復活の示唆まで得られたことは、次につながる一歩になったと感じています。

『エディオンで買うとdポイントがついてお得』というきっかけで来店していただいた方に、エディオンの本来の強みである店頭での接客技術や購入後のアフターフォローを体感していただく。それによって、『お得だから来る』という状態から『エディオンは親切だから来る』へとお客様の意識が醸成されていくはず。その非常に重要な『入り口』をつくる部分を、データで助けていただいていると感じています」(長谷川氏)

ドコモデータとの掛け合わせが生むリテールメディア

データ活用は、販促の効率化にとどまらない。エディオンは2025年6月、新たな広告配信プラットフォームとしてリテールメディア「エディオンAds」を提供開始した。Web広告や自社アプリに加え、店舗入り口のサイネージやテレビコーナーの画面などを統合的に管理・配信できる仕組みだ。デジタルで認知し、店舗で体感し、購入に至る一連の購買行動をデータでつなぐ狙いがある。

エディオンのリテールメディア「エディオンAds」は、店内ビジョンとアプリ、Web広告のほか、サンプリングやアンケートにも対応している

デジタルマーケティング部長の秋田大輔氏は、リテールメディアにおける自社データの価値について次のように話す。

「日本の企業は自社のデータを虎の子のように扱いがちですが、それだけでは新しい価値を生み出しきれません。ドコモさんのように日本全体をカバーできるデータと、自社のファーストパーティデータを掛け合わせて初めて、精度の高い販促が可能になります。特にクッキーレス化が進む中で、メーカー様にとって『実際に商品を購入した人』に直接アプローチできる小売の購買データは非常に価値が高いはず。家電の実購買データを持つ私たちのリテールメディアは、これからさらに需要が高まっていくと考えています」

エディオン 営業本部 マーケティング統括部 デジタルマーケティング部長 秋田大輔 氏

NTTドコモの石田拓土氏も、この取り組みにおいて「デジタルとリアルの融合」が成果に直結していると指摘する。

「実際にエディオンAdsを活用した販促のテストを実施した際、アプリでの配信に加え、店頭のサイネージやテレビでの放映を連動させました。デジタル上の接触とリアルな売り場での訴求をうまく融合させることで、その効果がしっかりと数字に表れてきています」

NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー カスタマーサクセス部 第一コンサルティンググループ 石田拓土 氏

プラットフォーム横断で目指す究極の顧客体験

エディオンとドコモの協業は、さらなるフェーズへと進んでいる。それが、ドコモグループのDearOne(ディアワン)が運営するリテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」の活用だ。これは、複数の小売業者のアプリを横断して広告を配信できる仕組みだ。

「2028年には国内のリテールメディア市場が1兆円規模になるとも言われています。現在はドラッグストアやコンビニ業界などが先行していますが、業界全体が一つのチャネルになっていけば、より効率よくお客様を店舗に誘引できるようになるかもしれません。今後も、オンラインとオフラインの融合をより一層加速させていく考えです」(秋田氏)

進化するエディオンとドコモの協業体制

ドコモの国井氏も、「取り組みをもう一段進化させていきたい」と意気込む。

「これまでは主に、エディオン様から消費者へ向けた『BtoC』の領域で、新規・既存顧客へのアプローチをご支援してきました。今後は、家電メーカー様とエディオン様をつなぐ『BtoB』の領域も強化していく予定です。エディオン様を単なるBtoC企業と捉えるのではなく、ドコモの経済圏や他加盟店とのつながりも活かしながら、エディオン様がメリットを享受できる環境を整えたい。ARUTANAはそのための重要なツールの一つになると考えています」(国井氏)

最後に長谷川氏は、今後の顧客体験のあり方についてこう語った。

「かつては『自社のデータは自社だけで囲い込む』のが当たり前でした。しかし今の時代、一企業だけでできることには限界があります。メーカー様やドコモさんのようなプラットフォーマーとデータを適切な同意のもと安全に連携し、互いに活用し合うことで、初めてお客様にとって有益な提案ができる。自社の売上を最大化していくことも大事ですが、情報をオープンにし、業界全体で活性化していく姿勢が不可欠だと感じています。

そして、その行き着く先は『1対1』のコミュニケーションです。お客様のニーズが多様化する中、価格だけでなく、価値に合うサービスやフォローを提供し続けるために、これからもデジタルの力を大いに借りていきたいですね」(長谷川氏)

エディオン×ドコモ 協業による施策のポイント

・ドコモが持つ属性・位置情報・決済情報などの膨大なデータを個人を特定しない統計情報として活用し、自社データだけでは見えない「他店での購買動向」や「生活導線」を可視化。顧客を「エディオンLover」から「休眠層」まで9つのセグメントに分類し、各層に最適なアプローチを実現。

 

・dポイントをフックに新規顧客を誘引し、店頭での接客やアフターサービスで「エディオンのファン」へと育成。ポイント還元施策の継続的な実施により、参加回数を重ねるごとに利用金額が向上するという、LTV向上の好循環を創出。

 

・一度離反した顧客に対しては、単なる再来店促進ではなく「なぜ離れたのか」「戻ってくる可能性はどれくらいあるか」をデータに基づいて科学。パワーのかかる休眠層に対し、効率的にリソースを配分するための羅針盤としてデータを活用。

 

・自社アプリやWeb広告に加え、店舗入口のサイネージやテレビコーナーの画面を統合したリテールメディア「エディオンAds」を展開。ドコモのIDデータと連携することで、メーカーに高精度なターゲティングと効果検証を提供。

 

・「ARUTANA」などのプラットフォームを活用し、家電メーカーとエディオンをつなぐハブとしての役割を強化。ドコモ経済圏や他加盟店との連携を通じてエディオン全体が潤う「BtoBtoC」のビジネスモデルを推進していく予定。

お問い合わせ

株式会社NTTドコモ

Webサイト:https://ssw.web.docomo.ne.jp/marketing/
メール:ad-sales-ml@nttdocomo.com

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