売上につながるUGCはどう生み出すか ウィングリットが示す、PGC×UGCの戦略設計

生活者が触れる情報量は増え続けている中、広告や公式コンテンツだけでは、購買行動につながらない場面も増えている。こうした環境下で重要性を増しているのが、UGC(User Generated Content)だ。
 
UGC領域におけるフルファネルマーケティング支援に強みを持つウィングリットの川上慶士氏は、4月23日開催の「UGC・SNSカンファレンス」(宣伝会議主催)に登壇。「売上向上につながる、継続的な発話を生み出すPGC×UGCの戦略・戦術設計思考」と題し、UGCの役割と設計方法を解説した。

生活者の情報接触はUGC中心に

ウィングリットはUGC領域に特化したマーケティングエージェンシーで、累計支援実績は5000件以上にのぼる。

執行役員CBOの川上氏は講演の冒頭で、現在の環境を「情報発信の民主化」と整理。主要なマスメディアに比べ、SNSやインターネットメディア上で流通する情報量は圧倒的に多いため、生活者が日常的に接触する情報の中心は、企業発信のPGCよりも、生活者発信のUGCへ移っていると話した。

写真 人物 ウィングリット 執行役員CBO 川上慶士 氏

ウィングリット 執行役員CBO 川上慶士 氏

SNS時代のメディア戦略として、広告出稿などのペイド(Paid)メディア、報道や口コミなどのアーンド(Earned)メディア、SNS上の共有を指すシェアード(Shared)メディア、自社サイトや公式SNSなどのオウンド(Owned)メディアを組み合わせるPESOの概念がしばしば用いられる。川上氏は、従来のPESOだけでは現在の情報環境を整理しにくいと指摘した。

そこで提示したのが、PGCとUGCだ。PGCはWebサイト、テレビCM、キービジュアル、イベントなど企業が完全にハンドリングして制作する情報やコンテンツ、クリエイティブを指す。一方のUGCは、インフルエンサー投稿、SNSや比較サイトでの口コミ、友人・家族による推薦まで含む、生活者発信の情報やコンテンツ、クリエイティブのことだ。

図 情報発信の民主化による影響

情報発信の民主化による影響

UGC施策がもたらす3つのメリット

UGC施策が必要な理由について川上氏は、潜在的損失リスクのヘッジ、PDCAサイクルの高速化による事業の回復・成長速度の加速、継続的・将来的なプラスαの事業インパクトの創出といった事業面でのメリットを提示した。

UGC施策のメリット

UGC施策のメリット

特に市場で圧倒的なシェアを持たないブランドや予算に制約のある企業にとっては、UGCを組み込む意義が大きいという。広告だけに依存しない発話の仕組みを持つことが、予算以上の副次的な露出の獲得や第三者発信による信頼感の醸成など、事業経営におけるリスクヘッジや成長加速につながるためだ。

発話量の推移とマーケットシェア(金額)の推移を重ねたデータでは、UGCによる発話量の増加とシェア拡大が連動していたという。さらにGoogleの公開データを基にした分析では、売上と指名検索に強い正の相関が見られた。

川上氏は、発話量だけでなく、指名検索量もUGC施策の効果を見る指標になり得ると説明した。

PGCとUGCはファネルで役割を分ける

PGCとUGCの使い分けについても解説した。川上氏によると、PGCは好感認知獲得やブランドイメージ形成などトップファネルで強みを発揮する。ブランドの世界観やコンセプトを、直感的に伝える役割を担うという。

一方、UGCは興味関心や特長理解の促進といったミドルファネルで効果を発揮しやすい。商品の使用実感や機能性を、生活者やインフルエンサーの熱量ある声として広げ、購買に向けた納得感をつくる。

ファネルごとに使い分けるコミュニケーション戦略

ファネルごとに使い分けるコミュニケーション戦略

施策の配置もファネルごとに変わる。認知獲得ではテレビCM、PR、PGC広告。特長理解や興味関心では、インフルエンサー投稿、UGC広告、勉強会、リレーション強化。使用意向や購入では、店頭施策、リテールメディア、ギフティング、サンプリングなどを組み合わせる。公式SNSは、各施策の受け皿と情報発信の起点、そして生活者とのコミュニケーションの場として機能させる必要があるという。

UGC創出は4段階で設計する

UGCを生み出すには、生活者が自然に投稿するのを待つだけでは足りない。川上氏は、UGC創出のステップを4段階で示した。

まず、商品を知ってもらうこと。テレビCM、Web動画、SNS広告、インフルエンサーPR投稿などを通じて、認知獲得と特長理解を促す。

次に、商品を実際に手に取ってもらうこと。ギフティング施策やモニター募集キャンペーンなどにより、生活者が商品を使う機会をつくる。

そのうえで、投稿したくなるきっかけを用意する。投稿の見本やフックを示し、発話のハードルを下げていく。

最後に、継続的に投稿が生まれる仕組みをつくる。単発施策で終わらせず、複数の施策を連動させることで、発話が続く状態を目指す。

川上氏は、届ける相手の設計も重要だと話す。たとえば1万人に商品を配布しても、その中でSNS上の発話にアクティブな人が100人で、投稿確率が10%なら投稿は10件にとどまる。一方、SNS上でアクティブな1000人に商品を届け、投稿確率が20%なら、200件の投稿が見込める。

意外と忘れがちだが、ステップ2に該当する上記の視点が重要である。発話を促すために、ただキャンペーン企画を実施するだけではなく、そもそも発話のポテンシャルがある人にいかに商品の良さを知覚してもらうか。ここを中長期的に取り組むことが重要であると添えた。

重要なのは「複数文脈接触」

インフルエンサーやメディアの戦略について、川上氏は「複数媒体接触」以上に「複数文脈接触」が重要だと強調した。

香り、パッケージ、仕上がり、専門家やインフルエンサーのお墨付き、トレンド感、コンセプト、機能・成分など、購買を後押しする文脈は多岐にわたる。どの文脈がどの生活者に響くのかを、事前に見極めるのは難しい。

PGCでは、リサーチや議論を経て決めたメッセージを途中で大きく変えにくい。だからこそUGC施策で複数の文脈を同時に試し、反応の高い文脈が見えた段階で、PGCとUGCの双方に反映していくことが重要になる。

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一方で川上氏は、すべてのカテゴリーで発話を目指す必要はないとも述べた。センシティブな商材や、ターゲット層がデジタル上で発話しにくい商材で無理に投稿を促すと、ブランドにマイナスに働く可能性があるためだ。

そうしたカテゴリーでは、UGCクリエイティブを活用した広告接触を通じ、調査データによるイメージ項目、検索数値、購買数値の変化を追う方が適しているという。川上氏は、売上と相関性の高いドライバー項目を継続的に見極めることを推奨した。

発話の質を高めるうえでは、インフルエンサーへのオリエンテーション設計も欠かせない。ブランドが伝えたいことを押しつけるのではなく、一人ひとりの個性を理解し、その人の文脈で伝えてほしい内容を設計する。1ブランドで1年間にオリエン資料を40回以上改訂したケースもあるという。

新商品発売時だけ話題をつくり、その後何もしない施策では、発話も売上も次第に落ちていく。PRイベント、インフルエンサー投稿、第三者配信、ギフティング、口コミサイト、キャンペーン施策などを断続的に重ね、UGCから得た発話、売上、検索のデータを次のPGCやUGCに反映する。そのフィードバックサイクルをつくることが、売上につながるUGC戦略の鍵になるとまとめた。

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