月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部をお届けします。
今回登場するのは、SNSで爆発的人気となったニホンザルの「パンチくん」で話題の市川市動植物園の「中の人」こと安永崇さん。SNS運用で経験したバズからのリスク管理の重要性や、最近の広告に対する違和感など、発信者・受け取り手双方の視点で話を聞いた。
※本記事の全文は、月刊『宣伝会議』7月号に掲載されています。
Q.フォロワー数20万人を超える公式Xを運用する上で、どのようなことを心掛けていますか。
当園は公営なので、市川市のメディア運用ルールに基づいたSNSの運用基準を策定して情報を発信しています。
当園の公式SNSは、基本的に私が中の人として、園内の様子を自らの目で確かめて、その都度、適切な情報をできるだけスピーディーに、かつ受け取り手に配慮した内容を心掛けて投稿します。自分の紡ぐ言葉が誤解をされないか、誰かを傷つけていないかと、投稿ボタンを押す直前はいつも緊張がピークに達します。
役所の情報発信は常に100点であることを求められますが、私は95〜98点を狙える「親しみを持てる発信」を心掛けています。共感が得られる限り、組織の論理にとらわれず、皆さんに親しんでもらえる表現を続けていきたいです。
プライベートでも、市川市の飲食店やイベントなどを紹介するX(@ichikawa_oishii)とInstagram(@yasunaga_ichikawa)アカウントを運用している安永さん。同園の公式SNS運用について次のように語る。「役所の広報は万人に受け入れられる情報であることが求められる一方で、親しみを持ってもらえる表現も大切にしています。個人発信でも役所発信でも、誰も傷つけない、誰も否定しないということは共通して気を付けています」。
Q.2026年2月にニホンザルの「パンチくん」が世界的に話題となった一方、その後にSNSでの炎上事態もあったと伺いました。当時の対応について教えてください。
あるお客さまが撮影された動画で、パンチが他のサルたちから足を引きずられている様子が拡散されました。実際には、パンチがサル山でのルールを知らなかったために少し怒られたというもので、その後飼育員が必要なケアをしたため本人もすぐに立ち直っていました。
ただ、その「怒られた部分だけ切り取られた動画」が拡散されてしまった以上、当園としてすぐに釈明すべきと判断。急遽、和文と英文で声明文を当園のWebサイトとSNSに投稿しました。
当時は現場もバタバタしていましたが、ファンに園への不信感を抱かせたり失望させたりするわけにはいかないため、丁寧で誠実な対応と説明が何より重要だと痛感しました。
SNSではネガティブな要素が強く拡散されがちですが、“市川市動植物園は動物を大切にする動物園だ”という基本的な運営方針がきちんと伝わるよう、ブレずに発信していくことを心に決めています。
市川市動植物園のサル山の様子。パンチ人気が沸騰し、来園者の数が急増したことを踏まえ、園側はサルたちのストレス軽減のため、現在来園者と柵の間に距離を設けている。安永さんは、4月12日、Xユーザーに向け「マナー向上の標語」を募集。300件以上の応募の中から採用した標語をプラカードとして掲げている。
Q.安永さんは、昨今のデジタル広告やオンラインを通じたコミュニケーションをどう見ていますか?
個人の趣味嗜好に合わせた「パーソナライズ化」については、便利だと感じる人がいる一方で、私は少し残念な側面もあると感じています。
広告には“偶然の出会い”があって、そこから気付きが生まれ、視野が広がるような良い影響をもたらす要素も大いにあると思うんです。「あなたにはこれがおすすめ」と提示されるのは、ちょっと押し付けがましいような気もしてしまって(笑)。
それはオンラインだけでなく、リアルの場でも同じです。園内でお客さまから「いつもSNS見てるよ」と声を掛けていただくことが増え、人と人のリアルなつながりの大切さを日々実感しています。
現場の飼育員は忙しいため撮影はご遠慮いただいていますが、私自身は園の代表であり広報役ですから、園内では“フリー素材”としていくらでも写真撮影に対応しています(笑)。私の発信やYouTube動画から、園のアットホームな良さを肌で感じ取っていただく。そういう情報発信ができているのであれば、それ自体が一種の「広告」なのかもしれません。
…安永さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2026年7月号に掲載しています。


