「なぜ、自分の主張は相手に届かないのか」。選挙のたびに深まる社会の溝、言葉がすれ違うSNSでの議論 。しかしこの「分断」は、決して政治の世界だけのものではありません。職場の人間関係や、家族・友人との意見の食い違いなど、私たちは日々あらゆる場面で壁に直面しています 。
本連載の執筆者は、長崎新聞の「平和企画」で今年度のTCC最高新人賞を受賞した鳥巣智行さん。「左寄りの自認がある」と語る鳥巣さんが、様々な立場や価値観の壁を乗り越えるための「コミュニケーションの設計図」を、広告クリエイティブの知見から描きます。
選挙が近づく。
政権与党の身勝手な振る舞いに呆れてしまう。不安を煽る排他的な言説や、不誠実な振る舞いを平然と繰り返す政治家たちの姿に憤りを感じる。SNSをひらけば同じことを感じている人たちが声をあげ、そこにたくさんのいいねが集まっている。声を上げることの重要さを知っている人たちは街頭で声を上げる。著名人が選挙へ行くことを呼びかける。今回こそは、少しはマシな結果になるのではないかと期待して、投開票日の夜を迎える。
結果は、自分が思っていたものとは程遠いものとなる。万歳を唱える人たちの映る選挙速報をそっと消して眠る。翌朝、暗い気持ちでSNSをひらくと、自分と同じように落胆する人たちがいる。こう感じているのは自分ひとりではない。希望を捨ててはいけないと思い直す……。
ここ数年、選挙のたびに、それを繰り返しているように感じる。繰り返すどころか、状況はますます悪くなっているのではないかと思う。
これを読んでいるあなたは、まったく逆のことを感じているかもしれない。批判ばかりする野党にうんざりし、はっきりとした物言いの政治家に強いリーダーシップを感じ、投開票日の翌日には晴れやかな気持ちでSNSを開いている人たちもいるだろう。
立場はどうあれ、分断は可視化され、その溝はますます深くなっているようだ。こうなってしまう原因のひとつはSNSであることは間違いない。同質な意見ばかりがタイムラインにならぶフィルターバブルの影響で、異なる考えを持つ人の声が見えづらくなっている。加えて不安や対立を煽る刺激が強い投稿ばかりが注目を集めるアルゴリズムの影響で、威勢のいい主張や差別的な発言ばかりが注目を集め、ヘイトが拡散され分断はより深くなる。
同質の人たちで固まってしまうということと、刺激的な発言ばかりが目立ってしまうことが重なり、保守はリベラルに対して、リベラルは保守に対して、それぞれ「パヨク」や「ネトウヨ」といったレッテル貼りをして、お互いに「あいつらはわかっていない」という態度で接してしまいがちだ。攻撃的な言説が目立ち、分断は強調されていく。建設的な対話や議論は十分なされないまま、威勢のいい主張ばかりが耳目を集める。不安は増幅し、攻撃的になり、調和や協力よりも排他的な自分たちファーストな主張ばかりが支持を集める。