「悩みはAIに相談し、AIがおすすめした商品を買う」。
この一言が飛び出した瞬間、ステージ上の空気が変わったのがわかった。キリンの営業部量販政策担当の棚田祥太さん、カルビーの新規事業推進部の田口夏菜さん、花王の化粧品EC推進部の北真実さん。企業マーケティングの最前線に立つ3人が、少し驚いた表情を見せたのだ。ビジネスカンファレンス「SHOPPER・X 2026」のセッション、テーマは「α世代と語る自社ECの未来」。スーツ姿の企業人が並ぶ壇上に、制服姿の高校生たちが同じ椅子に座り、同じマイクを持つ。登壇していたのは、その3社の皆さんと、本校・下妻一高の在校生・卒業生たちだった。
探究学習が育てた「登壇できる高校生・大学生」
高校生として登壇したのは、猪瀬日和さん、竹越悠山さん、髙野叶羽さんの3人。探究授業の「学校紹介動画」で1位・2位を獲得したメンバーを中心とする顔ぶれだ。大学生として登壇したのは、本校卒業生の赤荻草汰郎さんと榎戸夢さん、そして東郷姫奈さんの3人。高校時代に探究発表会で優勝した経験や、本校の「マーケティングゆるゼミ」第1期生としての活動を経て、今は大学生として学びを続けている(榎戸さん、東郷さんはともに立教大学)。
下妻一高の先輩と後輩が、世代を超えて同じ舞台に立つ。この座組自体が、本校が積み重ねてきた探究学習の一つの到達点だと感じている。単発のイベント登壇ではなく、探究の授業で企画力・発信力を鍛えた生徒たちが、卒業後もその力を携えて社会に出ていき、後輩と一緒にまた社会へ戻ってくる。そんな循環が、少しずつ形になり始めている。
企業とα世代、テーブルを挟んで見えた「生の声」
議論のお題はシンプルだった。「α世代は、商品を購入するとき何を見て、どう判断しているのか」。企業側の取り組みと、生徒・学生たちのリアルな消費行動を照らし合わせながら話が進むと、面白い気づきが次々と飛び出した。
「テレビはまだまだ強い」──SNS起点だと思われがちな世代だが、家族で見るテレビの影響力は健在だという。「店頭は“買う場所”だけでなく“体験する場所”」──購入はオンラインでも、実際に手に取り、試す体験は店頭に求めている。「親が満足している姿を見て、商品やブランドを好きになる」──広告や口コミより先に、家庭内での“満足の目撃”がブランド選好を形づくっている。「メルマガはほとんど見ない」──かつての主力チャネルが、この世代にはほぼ届いていない現実。そして冒頭の、「悩みはAIに相談し、AIがおすすめした商品を購入する」。検索エンジンでもSNSでもなく、AIとの対話そのものが購買の入口になりつつある。


