鶴野充茂(ビーンスター代表取締役)
番組スポンサーがCMをやめる必要はなかった。企業広報やリスクマネジメントの観点から見ても、少なくとも、そのまま続けるというシナリオは有り得た。そして今後、途中からCMを復活させるという形も有りだろうと考えています。
もちろんただ何の対応もせずに、というわけにはいきません。そこで、仮に今回の状況で番組スポンサーがCMをやめなかったというシナリオを想定して、その条件について考えてみたいと思います。
「そんなに簡単にCMやめるの?」 企業の現場に動揺
1月の放送開始から議論を巻き起こしているドラマ「明日、ママがいない」については、全スポンサーがCM放送をとりやめた一方で、番組は継続中という異例の事態が続いています。
番組スポンサーのすべてが世間の声に配慮した形の結論を早々に出したわけですが、企業の現場からは、こうした流れに釈然としないものを感じるという声が少なからず聞こえてきます。
確かに今回のスポンサーの決断は早かった。番組内容に関する抗議の声が制作側のみならずスポンサー企業にも強く及んでこともあったようで、第2回放送で全社がスポンサー表示を自粛、3社がCM放送を取りやめ、第3回放送にはスポンサー全社がCMを取りやめました。
スポンサーにも問われた問題へのスタンス
今回のドラマでは、放送開始直後からドラマの舞台となっている児童養護施設の子どもたちに関する差別や偏見が助長されるとして、関係団体が記者会見を開いて放送中止などを求めて抗議したのに対して、放送する日本テレビ側は当初、内容変更にも応じず、「最後まで見れば理解してもらえる」と社長が声明を出して放送を続けるとしました。
これによって正面衝突の構図になりましたので、抗議の声がスポンサー企業にも同時に広がったことは容易に想像できます。
今回のケースでは、演出面における過激な描写というよりも、児童養護施設で暮らす子どもたちという「特定の人たち」の取り扱い方が問題視されていますので、スポンサー企業にもそのスタンスが厳しく問われます。
鶴野充茂(つるの・みつしげ)
ビーンスター代表取締役
国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会理事。中小企業から国会まで幅広くコミュニケーションの仕組み作りに取り組む。著書は最新刊「なぜ経営者は『嘘つき』と言われてしまうのか?PRのプロが教える社長の伝え方・話し方」(日経BP社)ほか、25万部超のベストセラー「頭のいい説明すぐできるコツ」など多数。「広報会議」に「ウェブリスク24時」、日経ビジネスオンラインに「金曜動画ショー」連載中。公式サイトはこちら。
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