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宮崎駿監督の引退会見にみる、心を動かすコミュニケーションの変化とは

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【インタラクティブクリエイティブマスターコース】特別連載
第1回 「宮崎駿監督の引退会見にみる、心を動かすコミュニケーションの変化とは」
 ――澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・デザイン社長)
第2回 「インタラクティブなクリエイティブの企画の出し方のヒント」
 ――木下 謙一(ラナエクストラクティブ 代表取締役CEO/クリエイティブディレクター)
第3回 「Co−Creative = 協調型プロジェクトのすすめ」
 ――阿部 淳也一(ワンパク代表取締役 クリエイティブディレクター)
第4回 「音楽から考える、理想のクリエイティブ・チーム」
 ――村田 健一(ソニックジャム 代表取締役 チーフプロデューサー)

その他「インタラクティブクリエイティブマスターコース」関連記事はこちら

この記事は、「インタラクティブクリエイティブマスターコース」の開講に合わせ、掲載します。

澤邊芳明(ワン・トゥー・テン・デザイン社長)

今年もカンヌライオンズに向けた業界内の動きが激しくなってきました。映画にもなったように(今年1月11日公開・『 ジャッジ!』)、広告界のオリンピックで名を残すため、これまで、熾烈な闘いが繰り広げられてきました。

日本と違い、キャリアアップのためにジョブホッピングを繰り返す海外アドマンにとって、アワードとポジションは自身の未来を決める重要な武器となります。それにしても本当に入れ替わりが激しい。知人が目の前で次から次へと移っていくので、海外における人材流動性の高さを強く実感しています。

国内でも、ヤングカンヌのフィルム・プリント部門の日本代表選考がACC主催で始まり、JIAA主催のサイバー部門選考も三月中旬に行われます。未来のスターが多く生まれることを願っています。

さて、昨年のカンヌはご存じのようにソーシャルグッドがテーマとなりました。

当社の上海オフィスもJWT北京と共同で「Missing Children」でゴールドライオンを頂きました。この言葉は狭義には社会貢献と捉えられがちですが、私は違うと考えています。社会にとって有意義なファクトが重要なのです。

もちろん、無理に偽善的にCSRを果たしましょうという話では全くありません。とりあえず、木を植えたくなるのもわかりますが、それよりもブランドが持つ社会的価値を再認識し、その役割を表現すべきだと考えています。一過性のキャンペーンではなく、継続的なブランドと消費者との関係性が重要であると昨年のカンヌは示したと言えます。

少し話はズレますが、宮崎駿監督が昨年の引退会見で(毎度ながら、既に引退撤回の噂もありますが)、以下のように語っています。

ジブリを作った時の色々なことを思い出すと、浮かれ騒いでる時代だったと思います。経済大国になって日本はすごいんだ、ジャパンイズナンバーワンとかね。(略) 

でもその『ナウシカ 』、『ラピュタ 』、『トトロ 』、『魔女の宅急便 』っていうのは基本的に経済は勝手に賑やかだけど、心の方はどうなんだとか、そういうことを思って作っていました。

でも1989年にソ連が崩壊して、日本のバブルもはじけていきます。(略) 内戦状態になるとか、歴史が動き始めました。今まで自分たちが作ってきた作品の延長上にこれは作れない、という時期がきたんです。

その時に、体をかわすように豚を主人公にしたり、高畑監督はたぬきを主人公にしたりして切り抜けたんです。切り抜けたって言うと変ですけど(笑)。たぶんそう。

それから長い下降期に入ったんです。(略)その後、じたばたしながら『もののけ姫 』を作ったりいろいろやってきましたけど、僕の『風立ちぬ 』までずるずるずると下がりながら、これはどこにいくんだろうと思いつつ作った作品だと思います。

監督は、『 風の谷のナウシカ 』や『 天空の城ラピュタ 』といった完全な空想世界におけるファンタジーから、徐々に現実社会の中にファンタジーを溶け込ませた作品を作るようになってきました。

昨年の『 風立ちぬ』は素晴らしい作品で大変感動しましたが、監督が「この世は生きるに値するんだ」というこれまでの一貫したメッセージを伝えるために、ここまで現実に立ち返ることが必要になったのかと驚いたのも事実です。

もはやファンタジーでメッセージを伝えるのではなく、ファクトで心を動かす。それはコミュニケーションの世界でも同じなのかも知れません。

ここで、我々の身近な話題に切り替えましょう。今、私の実感として広告クリエイティブによるコミュニケーションから、ADKさん等も提唱されているコンシューマー・アクティベーションへと大きな変化(二極化)が起きています。

認識変容だけではなく、具体的な行動変容へ。以前ほど、影響力を持たなくなったマス広告から、より具体的に影響を与える施策へとデジタルがその動きを加速させています。

アドマンはどこを目指すべきなのでしょうか? 今、クリエイティビティの再定義が必要とされていると感じています。しかし、それは決してネガティブなことではなく、我々の活躍できるフィールドが拡大しているということなのです。

講座「インタラクティブクリエイティブマスターコース」の私の講義では、上海・シンガポールでの広告界事情や事例を元にした先進事例の紹介、今後の未来予想などをお話しし、上記で述べたような議論ができればと思っています。是非、ご参加ください。きっと楽しいです。


澤邊 芳明
ワン・トゥー・テン・ホールディングス 代表取締役社長/ワン・トゥー・テン・デザイン 代表取締役社長

京都工芸繊維大学卒業。1997年に1-10designを創業し、ユニークなアイデアと時流に合わせた先進的なチャレンジによって、多くの大型キャンペーンを成功に導いてきた。同社はこれまでに、カンヌライオンズ金賞、One Show Interactive金賞、アジア太平洋広告祭グランプリなど、国内外のアワードを100以上受賞。デジタルテクノロジーを軸としたインタラクティブスタジオとして、国内外から注目を集めている。2012年4月にはデジタルマーケティングを総合的にプロデュースするクリエイティブエージェンシー「1-10HOLDINGS」を設立。


【インタラクティブクリエイティブマスターコース】特別連載
第1回 「宮崎駿監督の引退会見にみる、心を動かすコミュニケーションの変化とは」
 ――澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・デザイン社長)
第2回 「インタラクティブなクリエイティブの企画の出し方のヒント」
 ――木下 謙一(ラナエクストラクティブ 代表取締役CEO/クリエイティブディレクター)
第3回 「Co−Creative = 協調型プロジェクトのすすめ」
 ――阿部 淳也一(ワンパク代表取締役 クリエイティブディレクター)
第4回 「音楽から考える、理想のクリエイティブ・チーム」
 ――村田 健一(ソニックジャム 代表取締役 チーフプロデューサー)

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