Future of Marketing!――顧客中心のマーケティングは、いかにして実現するか?

「選ばれ続ける理由」をつくるには?

日本オラクルの最新クラウド型マーケティング・プラットフォーム「Oracle Marketing Cloud」の日本発表を記念したイベントの第3部では「Future of Marketing」と題したパネルディスカッションが行われた。

企業のマーケティング戦略全体に精通するデジタルインテリジェンスの横山隆治氏、デジタルマーケティングの中でも、特にダイレクト領域に強いディレクタスの岡本泰治氏、アド領域に強いmedibaの菅原健一氏と、それぞれに異なる領域で活躍するそれぞれの視点から意見が交わされた。

コモディティ化が進む市場環境。さらにはスマホの浸透により、消費者はこれまで以上に時間や空間に縛られずに能動的に行動できるように変化した。これにより企業・ブランドにとっては「選ばれ続ける理由」がつくりづらい環境が生まれている。

この環境の中で、必要とされているのが「お客様視点」のマーケティングの実践。企業のマーケターが顧客中心のマーケティングを行う上で障壁になっているものは何か、その障壁を越えていくためにマーケターはどのようなアクションをとるべきかをディスカッションの大きなポイントとして3つの質問が投げかけられた。

現場が優秀だからこその日本企業の課題

最初の質問は、「お客様視点」でのマーケティング実践において、デジタルテクノロジーはどう貢献するのか。

横山氏は前提として、「ウェブのオンラインマーケティング、インターネットだけを最適化することはデジタルマーケティングとは呼ばない」と指摘し、マーケティングのサイクルが定期的、単発ではなく継続的で連続したものに変わった今、デジタル化、DMPの導入によって、短期間でマーケティング活動の実績や効果をデータ化し、把握できるようになったと話した。

岡本氏はデジタル化が進んだことで、「顔が見えないけれど、お客様かもしれない、これからお客様になってくれるかもしれない人たちのデータまで、精緻な形でリアルタイムに見えていくのが、大きく変わってきているところ」と話した。

菅原氏はエージェンシーの立場から「ゆるやかなセグメントでブランドとの関係性を深く求めている人たちとコミュニケーションが取れるようになったのは、デジタル化の時代ならでは。最終的には顧客一人ひとりとコミュニケーションをとるのが理想」と回答した。

2つ目の質問は、企業のマーケティングが理想とされる状態に向かうにあたり、日本の企業やマーケターにとって阻害要因になっているものは何か、というもの。宣伝会議が行った「デジタルマーケティングに関する実態調査レポート」の結果を参考に話題は進められた。

横山氏は日本の企業は、マーケティングの現場の適応力が高く、ソーシャルメディアやDSP、DMPといったことにも現場で対応してしまうことで、企業としての根本的な組織化や人材育成がなされていないと話し、ボトムアップの可能性を評価する一方、現場の要望に応えきれていない経営陣の判断を指摘した。

企業がグローバル化していく中で、経営陣の判断の鈍さが機会の損失につながる危険性にも触れ、企業内の権限委譲を進めていく必要があるとした。

また経営層と現場の意識や温度感の違いのみならず、現場の各部門間でも温度差や意識の違いがあるのではないか、という指摘もあがってきた。

次ページ 「5年、10年先の社会環境の変化を見据えることは非常に重要」に続く

3名のパネラー。左からディレクタス 代表取締役 岡本泰治氏、デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏、mediba CMO 菅原健一氏。モデレーターは、宣伝会議 マーケティング研究室室長兼編集主幹 谷口優)。

3名のパネラー。左からディレクタス 代表取締役 岡本泰治氏、デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏、mediba CMO 菅原健一氏。モデレーターは、宣伝会議 マーケティング研究室室長兼編集主幹 谷口優)。

菅原氏は「デジタルやデータが活用できていないばかりに、どれだけの機会損失をしているのかが可視化できていない。デジタル活用の意義を社内の複数部門で共有できていないのでは」と話した。

さらに菅原氏は「今の時代はデジタルマーケティングの“予行演習”の段階だと思う。明確な正解が見えなくとも、まずは始めてみることが大事。将来的には、今現在データを活用したマーケティングに取り組んでいる企業とそうでない企業で大きく差が出るのでは」と発言。また短期での投資効果だけを見ていると、大胆なデジタルシフトはなかなか実現しづらいかもしれない。5年、10年先の社会環境の変化を見据えることは非常に重要とも指摘した。

岡本氏は企業内で、デジタルマーケティングに対する意思統一ができていないという課題を踏まえ「専門の職種や部署が明確になっていない企業であっても、デジタル活用を率先して実践した人が、これまでの部門に限らず、予算を持ってくるような状況が起こるのではないか。既存の組織やそこでの役割をはみ出せる人の登場が企業の未来を開くのだと思う」と話した。

CFOやCIOも巻き込むことが必要

最後の質問は、障壁や課題を乗り越え、理想とするマーケティングを実現するために、マーケターはどのようなアクションをとるべきか。

岡本氏は、「Oracle Marketing Cloud」のようなデジタルツールを導入することでシームレスにつながり、大きなひとつのカスタマージャーニーのようなものを実現していくが、企業の組織はその動きに追いついていないと指摘。だからこそ、役職や部署の壁を破って動いていくことが大事だと、再度話した。

菅原氏も何を改善するのか、そのためにはどの部分の成長を評価すべきかをしっかり見極めた上で行動を起こすことをすすめた。「結果はやってみないとわからないが、何をアクションしたかがマーケターとして僕らの履歴書とか経歴になっていくので、そこは恐れずにやるべきだと思う」と話した。

横山氏は、マーケティングの予算を勝ち取るために経営陣に説明するための数字の裏付けをCFOやCIOといった人たちを巻き込みながら作っていくことが大事だと話した。「自らROI分析し、自分たちのマーケティング投資がKGIに対してどのような貢献をしているのかをつきつめていくと、わかりやすく可視化できる形で中間KPIのようなものができてくる」と話し、それを指標として向上するために試行錯誤できるように努力すべきだとまとめた。

企業のマーケティング活動において、デジタルへのシフトが不可欠なのは、疑いようのない事実である。とはいえ、今回のセッションでは社内上層部の理解やまた他部門との連携など課題も多く出てきた。

こうした状況においても社内の理解を得、その実践を推進していくためには、トライに対する成果を可視化し、具体的な成果を通じて理解を深めてもらうことが必要だ。

これまで世界の多くの企業でマーケティング活動のパフォーマンスアップに貢献した実績があり、加えてアクションから効果検証まで一気通貫でマーケターをサポートしてくれる「Oracle Marketing Cloud」は、デジタルマーケティング推進の旗振り役を目指すマーケターを支えてくれるソリューションと言えそうだ。

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