今年3月には日清紡グループの傘下となり、シャツ製造・販売の川上から川下までバリューチェーン全体を見据えた新たな事業を構築する準備を進めている。
ここでは『販促会議』12月号で掲載された内容を転載します
卸から小売りへ事業を大転換
東京シャツは1949年創業のシャツ専業メーカーだ。創業当初から百貨店などへの卸販売で事業を展開してきた。しかし、90年代初頭、バブル経済が崩壊すると、百貨店業界も打撃を受け、同社の卸事業にも影響が及んだ。
そこで97年、直営店を大阪・梅田に初出店し、小売事業をスタートさせた。
その後、徐々に小売業としてのノウハウを蓄積していき、2001年に本格的にSPA(製造小売)方式で小売事業を展開。SC における出店を中心に全国規模で店舗数を増やしていった。
卸事業から小売事業へとシフトし、現在は全国に207店舗を展開。シャツの価格は2900円、3900円、4900円(いずれも税別)の3ラインで構成。店舗には、ワンシーズン(半年)に約600の新柄商品が投入される。
東京シャツ 専務取締役 営業統括本部長 兼 商品本部長 渡部陽一氏は「梅田に直営店を出したときは、小売を事業の中心にしていけるかどうか、はっきり分かりませんでした。曲がり角にあった卸事業に代わる、新たな販路を開拓するためのチャレンジでした。試行錯誤を経ながら、SPA でコストを抑えて高品質な製品を作ることができたこともあり、店舗数が順調に増加していきました」と話す。
2015年2月現在で、全国に207店を展開。年間5000万枚を販売していると言われるビジネスシャツ業界において、東京シャツは販売枚数で業界トップの企業となっている。
売り逃した商品の情報も現場の手書きメモから把握
東京シャツでは、店頭に並べるシャツの首回りの形を可能な限り同一にすることに、徹底的にこだわる。「外部の工場で作られたシャツを、単に寄せ集めて売っているのではないという証し。当社の譲れないこだわり」と渡部氏は話す。
東京シャツがこだわっているのは、シャツを店頭の平棚で陳列したときの“首回り=仕上げの形状(顔)”の部分だ。同社はオーダーメード以外のシャツは中国など海外の協力工場で作っているが、どこの工場で作ってもシャツの「顔」の形をできるだけ同一になるようにしている。
「私達は協力工場に対して、同業他社よりも、生地から製品に至るまで一貫して管理に携わり、最後の仕上げの“顔”を大事にしています。来店されるお客さまは、そこまで認識されることはないと思いますが、このような隠れた統一感を持つことも、シャツ専門店としての差異化のひとつとして考えています。
ひいては、そのことがお客さまの信頼にもつながると信じています」(渡部氏)協力工場に対しては年間発注量を約束し、それを条件に作業する工員を変えないようして、商品のクオリティーを保っている。
東京シャツではワンシーズン(半年)に600柄のシャツを新たに市場投入する。渡部氏によれば、600柄という大量の新柄シャツをワンシーズンに出すメーカーは業界で同社だけだと言う。
これほど多くの新柄を出し続ける理由について、渡部氏はこう話す。「シャツは実用品と言えば実用品です。実用品ならば、白とブルーのシャツだけを販売すればいいのかもしれません。しかし、当社はお客さまに楽しんで店舗に立ち寄ってもらいたいと考えています。いつ行っても新柄シャツが見られる店舗ならばお客さまも楽しんで来ていただけると思います」
