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「書けなくても、書いてきた」 — 言葉のプロ2人は「書く」力をどう磨いてきたのか

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第54回宣伝会議賞も、11月11日の締め切りまで残すところ1カ月を切りました。宣伝会議賞実行員会では過日、コピーライターの阿部広太郎さんと作家の白岩玄さんをゲストに招いた応募者応援イベント「言葉を生業にするプロが語る、コピーやストーリーを考えるためのモノの見方」を開催しました。今年新設した「中高生部門」の審査員でもある二人が語った、言葉との向き合い方から、コピーを考えるための技術論・精神論まで。その一部を、レポートします。


「動く」「よく考える」「続ける」「ちゃんと生きる」

阿部:ライバルと差をつけるために必要なのは、「書き続けること」だと思います。もちろん、書けないときもある。それでも、書くことをやめないことが、賞への一番の近道なんじゃないかなと思っています。今日は、白岩さんと僕が、普段どのようにコピーや文章を考えているかを、伝えていきたいと思います。

僕は、コピーとは「言葉を企画すること」だと思っています。「経験→本質→コピー」という流れで考えていきます。より具体的に言うと、「たとえば」と「つまり」という二つの接続詞を使って考えます。「たとえば」から引き出されるのが「経験」、「つまり」から導き出されるものが「本質」です。

ここに大きな円があるとイメージしてください。それが「経験」だとして、その中心に「つまり」という、本質が詰まった熱い部分を見つけていく。「つまり」は一つではなく、複数の捉え方があっていいと思います。その中から、面白いもの・発見のあるものを見つけ、企てとして言葉に練り込んでいく。それが僕のコピーを考える際の思考プロセスです。

白岩玄さん

白岩:言葉や文章を書く技術力を高めるために必要なこと。僕は、「言葉の体幹を鍛える」ことだと考えています。身体の筋肉を鍛えるときも、体幹を鍛えるといいと言いますよね。それと同じです。具体的に、言葉の体幹って、なんだと思いますか?僕は、「信用」だと思っているんです。

以前、堀江貴文さんが、著作の中で、「信用さえあればお金は借りられる」と言っていました。それはつまり、“信用があれば、人の心は動かせる”ということ。それを聞いて、言葉も同じだと感じました。

では、どうすれば信用を得ることができるのか。言葉の体幹を鍛えていくことができるのか。ポイントは4つあると考えています。

一つ目は、「動く」。これは自分で調べたり、人に訊いたりして、情報収集をすることです。たとえば、車のコピーを書くために車を買うのは大げさかもしれませんが、実際に商品を知ることは大事なので、買ってみるというのも確かに一つの手だと思います。そこで得た情報は、労力を使い、身を削って得た情報なので、強い実感になるんです。結果的にそれは嘘になりにくいので、言葉にしたときの信用が増すのではないでしょうか。

二つ目は、「よく考える」。今あるものを疑う、ウソの量を減らしていく、ごまかしていないか考えることです。自分がつくったものを良いと思い込まずに、最後の最後まで疑うことも大事だと思います。

三つ目は、「続ける」。蓄積されたものは、信用を生むことが多いです。たとえば、サッカーを10年やってきた人の言葉と、1年目の人の言葉とでは、重みがまったく違います。蓄積のあるものを増やしていくことも、体幹を鍛えることにつがると思うんです。そのためには、何かにハマることも大切だと思うので、僕は、ゲームでもアイドルでも、いいなと思ったら、自分を止めずに許してあげる。すると、ハマったことが自分の中に蓄積されていくので、他の人とは違うものが書ける可能性が高まるんじゃないかと思います。

そして最後、四つ目は、「ちゃんと生きる」。

阿部:いい言葉ですね!

白岩:同じ言葉でも、人生においてどんな選択をしてきたかで、その重みは変わってきます。生きていく上で起こるさまざまな問題に対して、自分の頭で考え、悩んで、ちゃんと向き合っていれば、その人から生み出される言葉の質は変わってくると思います。ただ、誰が見ても正しいような生き方をしていると、人間としてはつまらなくなっていくので、そのバランスをとるのが難しいかもしれません。

次ページ 「二人でそれぞれ、去年の課題に挑戦してみた」へ続く