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3月に発売した『顧客視点の企業戦略』(発行:宣伝会議)は、「広告クリエイター」にこそ読んでもらいたい一冊です。なぜなら顧客視点で物事を考え、プロジェクトを企画・実現させるのは企業担当者や経営者、ストラテジックプランナーだけではないからです。今回のコラムで特にお伝えしたいのは、広告クリエイターという職業が持つ、能力の幅の広さです。広告の世界にインターネットやソーシャルメディアが加わり、クリエイターの活躍の場が広がりましたが、同様に顧客視点の時代を迎えて、さらに活躍の場が広がる可能性があるのです。広告クリエイターは職業柄、顧客に一番近い存在なのですから。
新人クリエイターがぶつかる最初の壁
新人クリエイターがぶつかる最初の壁をご存知ですか。
例外はあるかも知れませんが、私の知る限り、広告制作の現場に配属された新人の多くが、ある壁にぶつかるようです。もちろん私自身もこの壁にぶつかり、大いに悩んで苦しみました。
その苦しみを乗り越えることができたのは、良き先輩のおかげでした。広告クリエイターの世界では師弟関係が見受けられる場合が多いのも、壁を乗り越えために自分自身では気づかない客観的なアドバイスが必要だからだと思います。ポイントをわかりやすくするために、コピーライターを例に解説します。
例えば、コピーには企業やブランドが抱えるさまざまな課題を解決するという目的があります。そこでコピーライターは、いろいろな情報を頭に入れてコピーを書くことになります。どういう視点で述べれば生活者にわかってもらえるのか、どんなことをメッセージにしたら、生活者にうまく伝わるのか、あらゆる発想を駆使して一生懸命に書きます。
しかし新人が最初に書いたコピーは、先輩からダメ出しされる場合が多いようです。それらのコピーには共通して「欠けているもの」があるのです。
それは、コピーを読む「相手」の存在です。
