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デジタルの予言者が説く「クリエイティブとは、マインドセットである」

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9月24日から10月1日の日程で実施した、米ニューヨーク視察研修ツアー「Business Creation Lab. in New York」。6日間の視察を通じ、時代の変化に合わせて新たなビジネスモデルの確立に動く先進企業の動きを捉えるとともに、日本の広告界が目指すべき方向性を探りました。アドタイでは、視察団が訪問した注目企業について、レポートを順次公開していきます。
また「宣伝会議」2018年1月号(12月1日発売)には、レポートの総集編を掲載します。こちらも、ぜひご覧ください。

Oath
Digital Prophet  David Shing氏

 

米通信最大手のベライゾン・コミュニケーションは今年6月、約44億8000万ドル(約4930億円)で米ヤフーを買収した。これを受けて、AOLを含む傘下のメディア事業とヤフーの資産は統合され、約50のメディアブランドを擁する「Oath」が誕生した。

今回はOathのオフィスを訪問し、AOL時代から「Digital Prophet(デジタル領域の予言者、エバンジェリスト)」として年間300以上のカンファレンスに登壇してきたDavid Shing氏に「クリエイティブの近未来」をテーマに話を聞いた。

(以下、Shing氏)

クリエイティブとは、マインドセットである

「クリエイティブの近未来」というテーマの下、現在の広告業界やデジタルを取り巻くトレンドをお話ししようと思う。ただ先に断っておきたいのは、「クリエイティブ」とは、例えばクリエイティブなオフィスに置かれた「ハンモック」「滑り台」「恐竜の模型」など、何らかのモノに象徴されるようなものではないということだ。

クリエイティブはマインドセットだ。ある科学者が人の年齢に応じてIQ診断を行ったところ、こんな結果が出た。「人は5歳児の頃は98%が天才ともいうべき能力を持っている。ところが10歳になるとそれは30%に、15歳では15%に、そして成人になると2%になる」と。誰しも、生まれた時には目にするあらゆるものが真新しく、そこからさまざまなイマジネーションを得ている。ところが大人になると、固定概念に囚われるようになり、瑞々しかった感性は徐々に枯渇していく。

クリエイティブと同様に、「イノベーション」もバズワード化しているが、これもマインドセットに過ぎない。イノベーションとは、いわば「Invention(発明)」と「Change(変化)」と「Create(新しい価値の創造)」の複合語だ。新しいテクノロジー=イノベーションではない。テクノロジーが先行していくのではなく、イノベーションの背景には常に人の営み、文化がある。クリエイティブ領域に携わる人間は、常にそういう意識で新しいテクノロジーに向き合うべきだ。

今一度注目したい、ARの活用可能性

私たちを取り巻く、テクノロジーに関する新しいキーワードはたくさんある。VRにAR、MR(Mixed Reality:複合現実)まで…!キリがない。

皆さんの中で、VRを体験したことがある人はどのくらいいるだろうか?
(会場のほぼ全員が手を挙げる)
では、ヘッドセットを持っている人は?
(まばらに手が挙がる)
……これが現実だ。オキュラスも、GoogleのDaydreamも、素晴らしい製品だ。しかしながら現実を見れば、ほとんどの人はヘッドセットを持っていない。

一方で、ARはどうか。AR自体は使い古されたテクノロジーだ。だがスマートフォンは誰もが持っている。自分の顔にメイクを施すアプリや「Pokémon GO」は、ARを活用したサービスが広く普及した良い事例で、ARは今一層、私たちの身近な存在になっているのではないだろうか。

中国のNeobear(小熊尼奥)という企業は、子ども向けに非常に興味深いプロダクトを開発した。虫メガネの形をしたそのデバイスは、AR技術を利用し、子どもたちが室内にあるさまざまなものにかざすことで、アニメーションを映し出す。画面の中に没頭させるのではなく、現実世界と結びついて新しい創造性を刺激する。ARというテクノロジーは、今後さらに面白い活用ができるだろう。

次ページ 「IoTからIoEへ」へ続く