東急エージェンシーのクリエイティブユニット「TOTB」の河原大助氏は、著書『物語と体験』で、広告コミュニケーションが複雑化する中で、広告に求められる本質は、持続する「物語」と記憶に残る「体験」であると語っています。そんな河原さんと、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の著者 前田考歩さんが「プロジェクトと物語」というテーマで対談を行いました。
プロジェクトの大義・目的の共有が良いパフォーマンスを生む
前田:
河原さんの著書『物語と体験』には、そもそもなぜそのプロジェクトなのか、それをクライアントに問うとありました。そういうやり方になったのは、時代の流れですか?それとも河原さんのスタイルが変わっただけ?
河原:
時代の流れでしょうね。景気が良い時代は、何をやってもうまくいきますし、今の延長線上に未来があると信じることができた。しかし今は違います。あらゆる局面において舵を切らなければいけない時期を迎えている。そうしたなかで、僕らの役割は、どの方向に向かって舵を切るか指し示すことだと思っています。そうするためには、クライアントとの間にあるビジネス慣習上の上下関係を壊して、お互いにフラットな場所に立ち、同じ目線で大義や目的に向かって戦えるチームになることが重要です。少なくとも気持ちの上だけでもそういう構造にもっていければ良いパフォーマンスができるかなと思います。
前田:
その大義・目的が「なぜこのプロジェクトをやるのか」ということですよね。そうなると大変じゃないですか?オリエンどおりのことをやるよりも、時間がかかるでしょうし、プロジェクトが大型化すれば関与者が増えてハンドリングしにくくなりそうです。我々には、「ああ、プロジェクト炎上への第一歩を踏み出してしまいましたね」というふうに見えるんですけど。
