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「販促コンペ」って、どうなの? 座談会

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「第12回販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」(主催=宣伝会議)は2019年11月28日、「いま求められる企画とは何か?」をテーマとしたセミナーを開催した。第一部では、電通のプランナーで第11回販促コンペ最終審査員の尾上永晃氏が、商品を魅力的に見せ、売るためのポイントを講義。第二部では、グランプリ受賞企画の課題を提供した牛乳石鹸共進社の上野正雄氏、応募企画を実現した大関の長石元一氏らが登壇し、尾上氏を交え、パネルディスカッションを実施した。

協賛企業賞の着眼点 ネガティブさを楽しく解決

電通 尾上永晃氏:「販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」には、僕たち審査員が選ぶグランプリ以下の主要賞と、企画の元となる課題を出した企業の方々が選ぶ協賛企業賞があります。お二方とも、多くの応募企画をご覧になったと思いますが、どうやって選ばれたのでしょうか?

大関 長石元一氏:大関は今回が3回めの出題で、「ワンカップ大関」を題材にしたのは初回と今回でした。初回は300本、今回は500本を超えるご提案をいただきました。コンペ全体を見てもトップクラスの数じゃないかと思います。

協賛企業賞はまず、商品開発部門と販促部門、宣伝の部署が集まって選びました。私どもまで上がってくるものは「なるほどな」と思わされるものが多かったですね。

牛乳石鹼共進社 上野正雄氏:当社は、「スキンライフ」という洗顔フォームや化粧水を、若い人たちにコミュニケーションするという課題で、総数で200本弱くらいいただきました。

最近は弊社も若返っていまして、特にマーケティング部は20歳代から30歳代前半の社員が中心で、私のような役職ある者が選考に入ると意見が偏ってしまいますので、若い人たちの感覚でひとりずつ採点し、集計して選びました。おかげでかなりいい選択ができたのではと思っています。

尾上氏:数多くの応募からは、多様な視点が得られますね。協賛企業賞に選んだ企画は、どういったところが良かったですか。

長石氏:飲み会に仕事で遅れるとき、「ワンカップ大関」でスムーズに参加できるという切り口の企画「宴会特急おおぜき一号」を選びました。後から飲み会に到着しても誰も気づいてくれない、どこに座っていいかわからない、すでに場が盛り上がっていて話についていけない–皆さんもご経験ないでしょうか? こうした問題を「ワンカップ大関」が解決します、というものでした。

尾上氏:ユニークかつ効果的で、いますぐにでもできそうな企画ですね。

長石氏:初回に協賛企業賞として選ばせていただいた「FUN! CUP! 大関」という企画は一昨年に実現しました。「宴会特急おおぜき一号」もすでにアプリ制作に入っています。

上野氏:「スキンライフ」は発売57年というロングセラー商品で、メインターゲットはニキビに悩む中学生。ですが、今回は「女子高生にもスキンライフを使ってもらいたい」と課題を出しました。

協賛企業賞に選んだのは「#スキンライフ泡アートチャレンジ」という、自撮り写真をデコレートするように、泡でヒゲやまゆを付けた写真を投稿したり、シェアしてもらったりする企画です。

「スキンライフ」の特徴である泡を用いて、洗う楽しさ、シェアする楽しさを通じ、「ポジティブな洗顔のイメージをつける」という点で選びました。

尾上氏:「宴会特急おおぜき一号」は宴会に遅れる、「#スキンライフ泡アートチャレンジ」は「女子高生にとってニキビは悩み」という、ネガティブな状況を楽しく解決する、という点もよいですね。

長石氏::審査員の皆さんがシルバーに選ばれた案(「ワンカップ大関横丁」)は、当社内でも最終候補まで残っていまして、非常に悩みました。

上野氏::実は当社のほうでも、グランプリに選ばれた作品(「SkinLife for School」)が、協賛企業賞の候補として残っていました。

尾上氏:悩みますよね。いい企画が多く寄せられるので、我々審査員も、どれをグランプリに選ぶべきか、かなり時間をかけて議論して、何回も投票しました。

いま上野さんがおっしゃられたグランプリ企画「SkinLife for School」は、「スキンライフ」のパッケージをペン状にすれば、筆箱に入れて何気なく学校に持っていける、というアイデアです。学校になじむペン型にすると、いつもの商品がいろいろ違って見えてきます。持ち歩きやすい、習慣にしやすい、詰め替えで経済的などですね。

これがグランプリと聞いてどう思われましたか?

上野氏:正直、ビックリしました。

尾上氏:実のところ、僕も最初はそこまで高く評価していたわけではなかったんですが、大学生でホテル経営をしている最終審査員の龍崎翔子さんが「ものすごくよくわかる」と。

企画書中の細やかなやり取りにもリアリティがあって、学校に隠して持っていくドキドキ感とか、使う人の気持ちに沿って、商品の新しい場所を見つけたところがグランプリにふさわしいということになりました。後からわかったのですが、企画者は30歳代の男性だそうで、「よくここまで女子高生の気持ちがわかったなあ」と、二度感心しました。

受賞作について、反響や今後の展開はお考えですか?

上野氏:社内でも結構ザワつきました。ふだん、お取り引きしている化粧品の包材メーカーさんからは、文房具を発想としたような案はなかなか出てきませんから。できればこの形で商品化したいのですが、薬用化粧水なので薬機法や詰め替えの衛生面など課題もありますが、今後検討していきたいと考えています。

若い世代にアピールすると 昔のファンも帰ってくる

尾上氏:今回の審査を経て、今後の販促に関する展望や最近実施した販促キャンペーンについて教えてください。

長石氏:2019年は「ワンカップ」で2つのコラボレーション企画が実現しました。「ゴジラ」と「キン肉マン」です。

ゴジラは、前回の「販促コンペ」で実現した企画を東宝の方がご覧になって、ご提案いただきました。

「ワンカップ」は当社のフラッグシップ商品ですので、企画進行については反対意見も予想されましたが、発売から55周年の記念の年でもあり「面白いことをやろう」という機運になり、実現しました。

「ワンカップ」は発売が1964年で、当時20歳代の方がもう70歳代。「ゴジラ」は60歳代がメインのファン層。長年のファンの方への感謝という位置づけの企画です。

一方、「キン肉マン」は40歳代半ばがメイン。流通の中でいろんな物事を決める中心になっている世代で、とても反応が良かったです。やや若い世代に向けたプロモーションになっています。

尾上氏:ターゲットの方々に対して、「感謝の気持ちで」というのがすごく面白いですよね。

上野さんはいかがですか?

上野氏:若い世代と言えば、いま当社の固形石けん「カウブランド 赤箱」がブームになっていまして。ポップアップストアを出したところ、京都では約1万2000人、福岡では約1万人にお越しいただきました。そこで、若い人が泡立て体感したり、写真をSNSに投稿したりと。赤箱、青箱のパッケージにとても愛着を持っていただいている一方で、もう固形石けんを使ったことのない方もたくさんいらっしゃって。

尾上氏:ふだん使うのはポンプ式のボディソープが多いと。

上野氏:そうですね。そういう若い方々には、むしろ固形の石けんが目新しく感じられるようです。

それで買って帰ると、お母さんやおばあちゃんが「昔使っていた。懐かしい」と反応してくれる。我々が最近、「洗顔にいい」という切り口でおすすめしているので、それをお子さんが家族に話して、一度離れた赤箱ファンが帰ってくるという現象も起きています。

ロングセラー商品は、若年層の獲得にトライすればするほど、上の世代にも波及することに気付きました。

尾上氏:なるほど。それは「ワンカップ」にも通ずるところがありそうです。

長石氏:そうかもしれません。「ワンカップ」がいまの30歳代~40歳代にどうとらえられているかを考えると、実のところマイナスイメージはあまりないように感じます。Instagramを見ても、若い女性が手に取っていたり、ネガティブさが払拭されつつあるように思うんです。どちらかというと、私たちメーカー側がネガティブさを心の中に引きずっています。

尾上氏:ロングセラー商品が一周回って新しく見えてくるって面白いですね。これが若い人を起点にブランディングしなおすということだと感じました。

では最後に、販促コンペの悪いところ(笑)と、良いところをお願いします。

長石氏:強いて言うなら、悪いところは、良い企画がたくさんあっても、実現するとなるとハードルがいろいろあって、難しい部分がある点です。良いところは、自分たちだけでは着想できない案をたくさんいただけること。これはメーカーとしてはこの上ないと思っています。

上野氏:牛乳石鹼は、「販促コンペ」への協賛は今回が初めてで、いきなりグランプリでしたから悪いところは全くないです。(笑)

良いところはやはり、新しい発想や議論が生まれる点ですね。マーケティング部の商品開発メンバーだけでは伝統を気にして新しい発想がわきにくい、チャレンジするにも「変えてはいけないんじゃないか」と飛びぬけた発想が出にくいところがあります。着眼点を違うところから引っ張ってこれるのは、非常にありがたいなと思います。

尾上氏:お二方とも、本日はありがとうございました。

「販促コンペ」に関する問い合わせ
E-mail:osaka@sendenkaigi.co.jp
Tel:03-3475-3030

 
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