透明性の時代、企業はどのように生活者とコミュニケーションしていけば良いのだろうか?
ソーシャルメディア先進国である米国の事例を二つほど例にあげ、そのポイントを考察していきたい。ソーシャルメディア活用でも先進ブランドとして名高いペプシとドミノピザにおけるトラブル対応事例だ。
ペプシによる大規模社会貢献キャンペーン、炎上とその対策
ペプシが2010年1月13日にローンチした「Pepsi Refresh Project」は、毎月コンテストで選ばれた32の社会貢献プロジェクトに対して、ペプシが月130万ドルの予算を提供してバックアップするというもの。支援額は年末までに総額でおよそ20億円規模、まさに世界最大級のCSRキャンペーンとして大いに注目された。
そして記念すべき第一回のプロジェクト投稿は1月13日から開始され、初回期限は1月31日。しかし、投票も終盤間際の2月25日、やっかいな問題が発生する。この投票プロセスをめぐる疑惑記事が、突然ニューヨークタイムズ誌に掲載されたのだ。
この記事によると、最大規模の25万ドルをかけたプロジェクトにおいて不正なプロセスがあったとのこと。具体的には、投票でトップを走るJoyful Heart Foundation(以下、JHFと略)が用意したプロモーション用動画に、投票後にアップされたはずのPepsi Refresh Projectサイトのイメージが入っている。
話がややこしいのは、このJHFの主催者が、マリスカ・ハージティという女優であること。つまりセレブと組んだヤラセ疑惑に発展しかねない危険なスキャンダルだったのだ。この時、ペプシのとった対応は実に素早く、極めて賢明なものだった。
1.まず、記事上での謝罪と対策の発表
まずニューヨークタイムズ誌の取材時点で、ペプシ主催者側がルール違反を犯したことを認め、率直に謝罪したのだ。さらにこの25万ドルプロジェクトで選考されるプロジェクト数を、当初の2案件から3案件に変更した。つまりペプシは25万ドルの追加コスト負担を直ちに決定したわけだ。これによって、本来読者が感じたであろう疑念や怒りの感情を最小限に抑えることに成功した。
2.続いて、速やかに詳細をブログで発表
さらにPepsi Refresh Projectブログにおいて、彼らに過ちがあったこと、それがニューヨークタイムズ記事に掲載されたこと、さらに対策として打ち出した選考方法の詳細を説明した。そして最も印象的なのは、このトピックに関してフェイスブック内にディスカッションの場を提供、ユーザー同志で自由に意見交換をすることをすすめたことだ。このプロセスにより、ペプシはユーザー間の議論を恐れずに、この問題に真正面から取り組む真摯な態度を表明したのだ。
3.フェイスブックでのディスカッションへの速やかな応答
迅速かつ適切な対応により、このページでのディスカッションへの書き込みはわずかだった。JHFが受賞できてよかったとする意見が1件、現時点でJHFが3位に落ちたのはペプシが意図的に落としたのかなどといった疑問に対しても速やかに対応している。
まず投票は継続しているとコメントするとともに、フェイスブックノートおよびPepsi Refresh Projectブログページに、それぞれ質問に対する詳細な回答を、過剰なほど丁寧に追記しているのだ。
スキャンダルに発展しかねない大きな火種が、ニューヨークタイムズという影響力の大きいメディアに暴露されたにもかかわらず、ペプシは極めて迅速かつ誠実な対応で、このトラブルをブランドイメージの毀損なしに乗り切ったのだ。そして、結果的にユーザーによる炎上現象も起きていない。ペプシのとった迅速で真摯な対応がいかに効果的だったことを示している。 (次ページへ続く)
「ソーシャルメディア時代のチェンジマネジメント」バックナンバー
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