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発酵デザイナー・小倉ヒラクが語る“発酵の魅力”「何段階か未知の扉が待っている」

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※本記事は株式会社マスメディアンの『advanced by massmedian』に掲載された記事を表示しています。

ファッションデザイナー、起業家、インフルエンサーなどマルチに活躍するハヤカワ五味さんがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「マスメディアン 妄想の泉」。この番組では、さまざまなフィールドで活躍する起業家やクリエイター、アーティストをゲストに迎え、未来を面白くするヒントを“妄想しながら”探っていきます。11月14日(土)の放送は、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが登場しました。

 

発酵の魅力にハマりデザイナーから転身

“発酵デザイナー”という唯一無二の肩書きについて、「海外で仕事をしていても『お前みたいなヤツは見たことがない』と言われるので、けっこうレアな肩書きですね」と小倉さん。

現在37歳で、30歳までデザイナーとしてアートディレクターの仕事をしていたなかで、「20代後半に微生物の世界に出会って、5年ぐらい(自分で)お味噌などをつくったり、利き調味料をしたりして、“発酵って面白いな”と思っていた」。さらに発酵の魅力にのめり込んでいった小倉さんは、醸造メーカーなどにも足を運ぶようになり、「蔵の旦那さんと仲良くなっていくうちに、デザインの仕事を頼まれるようになった」と振り返ります。

そんな発酵好きが高じて、2014年に「てまえみそのうた うたって おどって つくれる 絵本」を発刊。その絵本の取材を受けた際、「記者の方に『小倉さんは、発酵をデザインしていますね。“発酵デザイナー”ですね』と言ってくれて。よくわからないけど“イケてる肩書きかも!?”と思って、『これから、そう名乗っていいですか?』と言ってから6年になりますね」と肩書のきっかけを語ります。

発酵と腐敗は紙一重

そもそも発酵とは、小倉さんいわく「人間の役に立つ微生物が働くプロセスのこと。大豆にいい菌が付着するとお味噌になるけど、悪い菌が付着してぐちゃぐちゃになる。それは“腐敗”なんです。いま、僕たちのあいだ(の空気中)にもすごくたくさんの菌が(浮遊して)いるんですけど、そのなかにもいい菌と悪い菌がいて。たまたまいい菌が入ると発酵になり、悪い菌が入ると腐敗になる。だから、発酵と腐敗は紙一重」。

また、日本は湿潤でたくさんの微生物が存在するため、「(食材が)腐ってしまう菌もいるので、“食べ物をダメにしたくないから”とご先祖がなんとかいい菌だけを呼び込もうと頑張ったトライアルの集体が、日本の発酵文化」と解説します。

そのため、醤油や味噌といった発酵調味料や、納豆などの発酵食品は「そういうものを設計しようと思ってできたのではない。なんとかして目の前の課題(腐敗)に対して最大のアクションを取り続けていたら、いつの間にか(発酵)文化になっていた」のだそう。

ここでハヤカワさんが発酵の世界の魅力を問うと、小倉さんは「自分の予想もしていない世界にたくさん出会えること」と回答。年齢を重ねるにつれ「“こういうものだよね”って、(自分の)世界に未知のものがなくなっていくけど、それを覆していくのが発酵の面白さ」と力説します。

「サイエンス(科学)の領域でいうと、いままでわかっていなかったことがたくさん明らかになってきているので、研究すると楽しい。そして、できたものを食べると、その味自体がいままで知らなかった味なので、それも楽しい。“どうしてだろう?”と科学的に見ていくと、いままで知らなかった謎の微生物が出てくる。何段階か未知の扉が待っている」と奥深い発酵の世界を語ります。

「“発酵沼”に落ちていく人が続出」

小倉さんは発酵デザイナーとして、本の出版をはじめ、昨年は東京・渋谷ヒカリエで発酵ツーリズム展「Fermentation Tourism Nippon ~発酵から再発見する日本の旅~」を開催するなど、幅広く活動しています。

そして、今年4月には東京・下北沢に実店舗「発酵デパートメント」をオープン。ここは、「世界の発酵みんな集まれ!」を合言葉に、各地の珍しい発酵食品やお酒など、発酵にまつわるさまざまな商品を取り揃えたショップで、「発酵LOVERの殿堂ですね(笑)」と自信をのぞかせます。

現在はコロナ禍とあって、当初の予定よりも種類は少なくなったものの、国内だけに限らず「世界中の不思議な発酵食品を集めています」と小倉さん。醤油や味噌などの発酵調味料1つをとってもさまざまな種類があるそうで、なかには白い醤油や麦でつくられた味噌もあるとか。また、食材だけでなく微生物の発酵技術によってつくられた消臭剤など「微生物の力を使った有用プロダクトを集めている」と言います。

ちなみに、普段からあまり妄想はしないという小倉さん。「あまり己を内省しない性格で、ただひたすら行動するタイプ」と自己分析をします。昨年開催した展覧会で、世界各地で集めてきた発酵食品を販売するための小さなミュージアムショップを設置しました。すると商品が飛ぶように売れ、そんな様子を見たある人から、「これをお店にしてみないか」と提案されたそう。それがきっかけで、発酵デパートメントの出店に至ったと、小倉さんは話します。

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の最中にオープンしたため、「全国各地から発酵好きの人がくればいいなと思っていたけど、“これない”という状況で。結果的にいまは、平日だと7~8割がご近所の人たちにきていただいています(笑)」と小倉さん。

そんななか「すごく面白いのが、“発酵沼”に落ちていく人が続出したんですよ(笑)。最初は普通の醤油を買っていたのに、我慢できなくなって白い醤油を買っていったり、みなさんだんだんとマニアックになっていって。さらに、コミュニティができてワークショップをし始めたり。だから僕の役割は、普通の人を“発酵沼”に引きずり込むのが仕事なのかな、と思い始めていますね(笑)」とユーモアたっぷりに語ると、ハヤカワさんも「片足10cmぐらい入っているかも(笑)」と興味津々の様子でした。

【この記事の放送回をpodcastで聴く】


<番組概要>
番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter:@mousou_tfm


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