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「刈り取り」偏重からの脱却 デジタルでロイヤルティを高められるか?

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4月末にアップル社のOSで“ユーザーの追跡を阻止”する仕組みが導入されるなど、従来の仕組みによるターゲティング広告は難しくなる状況にある。今後デジタル広告において、どのような知見が必要になるのか。GMO NIKKOのエグゼクティブマネージャー、五十嵐慧氏に話を聞いた。

配信技術の発展とともに、求められるのはクリエイティブ力

これからのデジタル広告業界における最大の課題が、「クッキーレスへの対応」です。iOS14.5へのアップデートにより、アプリによるトラッキングの許可をユーザー自身が選択できるようになりましたが、これは広告業界にとって非常に大きなインパクトがあります。デジタル広告市場の拡大を牽引してきた刈り取り目的のリターゲティング広告に依存しないデジタルマーケティングが求められるようになるからです。

特にダイレクトレスポンスを重視するような広告を展開していた広告主や広告会社、サービスベンダーにとって、これは緊急かつ重要な課題。確固たる解決手法は見えていない状況ですが、メディア側含めた理解とノウハウ構築が必要です。

一方で、アドエクスペリエンスの課題についてユーザー視点で見ると、最も大きな問題は広告のミスマッチが生み出す不快感が挙げられます。

ターゲティングの精度は年々上がっていますが、そもそも広告主はターゲットだと思っていても、ユーザーがその情報を求めていないことも。特にコンプレックス系商材において、こうした傾向があるように思います。またフリークエンシー過多という問題もあるでしょう。表示頻度を技術的に制御することは可能ですが、一度表示されれば十分なこともあれば、何度か表示されることで効果を示すものもあり、商材やシチュエーションによって適切な表示回数は異なります。

これらを改善するには、ターゲティングやフリークエンシーの仕組みを見直すだけでなく、広告クリエイティブのブラッシュアップが求められていると思います。1stパーティーデータと紐づけて、可視化されたユーザーだけに広告を配信することは可能ですが、それでは新しい顧客との接点をつくる、広告としての機能性を大きく制限することになりかねない。広告に触れたユーザーがどのような状態であっても、ブランドイメージを向上できるクリエイティブが必要となるのではないでしょうか。

刈り取りを重視して、デジタル広告を出稿してきた企業では、ブランド価値向上という目的において新しい指標や効果測定の手段の開発が必要になるでしょう。デジタル広告の体験を向上させることは、直近の購買だけでなく、その先のファン化、ロイヤル化を見据えてのこと。そのためにも、マス広告と同様に中長期軸での検証も必要になってくるのです。認知度や好意度、購買意欲などの調査、継続率なども指標になるでしょう。

もちろん、それらの指標だけを追っていても、本来デジタル広告としての強みであった効果・効率が悪化する可能性があります。大切なのは、常に短期と中長期の二軸で検証すること。サービスやブランド、商材にあった設計バランスを模索していくべきだと考えます。

GMO NIKKO
広告事業本部 マーケティングソリューション2部
エグゼクティブマネージャー
五十嵐 慧 氏