【前回】「最近よく聞く「パーパス」って何ですか? Vol.2 日本柔道躍進の陰にパーパスあり」はこちら
エスエムオー株式会社代表取締役/ブランディングコンサルタント
齊藤三希子
近年、広告界を中心に注目され、ムーブメントになりつつある「パーパス」。「何のために存在するのか」という、企業経営における本質であるにもかかわらず、その本来の意味を理解しきれず、どのように活用していけばよいのか、答えを出しかねている企業が少なくありません。
日本において早くからパーパスについて取り組んできたエスエムオー代表取締役
齊藤三希子氏は、パーパス・ブランディングについて次のように説明します。「個別の事象で課題を解決していくのではなく、企業や組織の根幹となる拠り所=「パーパス(存在理由)」を見つけ、究極的にはそれひとつで判断・行動をし、課題を解決していくこと」。本コラムでは、7月9日に発売となる齊藤氏の著書『パーパスブランディング〜「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える』(宣伝会議)をベースに、身近な事例から「パーパス」について紐解いていきます。
新卒の就職先人気ランキングは、その時代を移す鏡として注目されています。一方で、そのランキングには載ってこないものの、一部の学生に強烈なファンを持つ企業があります。横浜に拠点を置く大川印刷です。100年以上の歴史を持つ老舗ながら、一般への知名度は高いわけではありませんが、就職先として大変人気の高い企業です。その秘密は、大川印刷が早くから「ソーシャルプリンティングカンパニー」として、地域貢献、そして社会的課題解決の実践に取り組んでいるからに他なりません。
このように、就職活動において、環境などの社会的課題に対して真摯に(ここがポイントです)取り組んでいる企業を選ぶ学生がある一定数いることがこの数年で浮き彫りになってきました。現役大学生であり学生起業家の勝見仁泰氏はそうした就職活動を
と名付け、「人・地球・社会に配慮し、“環境配慮”や“社会課題”」に積極的に取り組む企業への就職ムーブメントを起こしています。
エシカル就活を行う学生は、環境問題や人権問題を身近な問題として捉えていて、それをビジネスで解決したいという想いが起点となっているようです。以前であれば、JICAなどの非営利団体で働きたいと思っていた人たちが、企業にシフトしていると捉えています。また、ボランティアの経験者も多く、海外で生活をしていたことがある、海外に興味がある、といった特徴があります。彼ら彼女らは希望する企業の知名度や大きさにこだわらず、スタートアップや中小企業でも社会課題の解決に取り組んでいるところをターゲットにしています。私の極個人的な意見ですが、自分なりの強い判断基準をもった、成績も良い優秀な学生群です。

