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海洋プラごみから石けんケース 九州の企業・大学らが発売

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8月30日に、おぢかアイランドツーリズムはシャボン玉無添加石けん入り石けんケース「mu(ムー)」の発売を開始した。

「mu(ムー)」は、五島列島の北部にある小値賀島の海洋ゴミのアップサイクルにより誕生した石けんケース。今回、おぢかアイランドツーリズム、九州産業大学ソーシャルデザイン学科、プラスチックメーカーであるテクノラボとのコラボレーションで実現に至った。

「セルロイド製の石けんケース」のようにも見える「mu(ムー)」は、実際に五島列島・小値賀島の海岸で採取した海洋ゴミを素材とする「100% 小値賀島産」のアップサイクル製品だ。「mu(ムー)」という名前には、「無=0」という意味が込められている。そして、石けんケースは一つとして同じ色や柄の製品はない。

「そもそものきっかけは、2021年に行った大学の演習でした」と、この企画に取り組んだ九州産業大学ソーシャルデザイン学科 伊藤敬生教授は話す。

「僕らの研究室では、昨年から小値賀島の海洋ごみ回収プロジェクト『OJIKA ISLAND GREEN TRIP』のお手伝いをしていました。小値賀島の海洋ごみ問題を取り上げ、解決策を探る授業を行い、学生たちと海洋プラごみのアップサイクルアイテムを考える中で4年生 安田美菜さんのアイデア『おぢかブローチ』が採用されました。それをきっかけに、今年からテクノラボさんの協力を得て、小値賀島での島民や観光客の皆さんで行うワークショップがスタートしたんです」

小値賀島で活動するおぢかアイランドツーリズムでは、これまでに観光客が気軽に環境保護活動に貢献できる「クリーンキット」を製作して配布する「OJIKA ISLAND GREEN TRIP」、拾った海洋プラスチックを新しい命に生まれ変わらせる「SEA YOU AGAINプロジェクト」を実施。海洋ごみの回収活動に取り組んできた。そんな中で、伊藤研究室との取り組みが始まったという。

当初は、海洋プラごみで小値賀島の特産品の「落花生」と野崎島に住む「鹿」をモチーフにブローチを製作していたが、それがなぜ石鹸ケースへとつながっていったのだろうか

「海洋プラごみを原料にプロダクトをつくると、強度の問題や用途などに多くの制約があります。例えば口をつける食器などは避けていますし、強度上大きなサイズの成形には向きません。そんな中で離島でのもう一つの課題。海への生活排水問題に取り組むシャボン玉石けんとのコラボにつながり、石けんケースの開発に至りました」(伊藤教授)

シャボン玉石けんは、2021年9月より福岡県宗像市地島(じのしま)にて「生活排水の環境及び生物に対する影響に関する実証実験プロジェクト」を開始。一般家庭、地島小学校、漁村留学センター「なぎさの家」において、一定期間洗浄剤に石けんを使用してもらい、実証実験前後の水質や生物の分析、生活排水による環境影響を調査している。

また、神奈川県横浜市を拠点とするプラスチックメーカー テクノラボとの出会いも大きかった。今回のプロジェクトでは、海洋プラごみを島民が分別・洗浄・粉砕し、テクノラボがそれを資源として購入。その再生技術によって、アップサイクル製品の製造が可能となった。

こうして環境問題に取り組んでいたそれぞれの想いが一致し、今回のコラボレーションが実現したのである。

石けんケース「mu(ムー)」はシャボン玉無添加石けん入りというかたちで販売を開始。福岡で生活道具などを扱うショップ「B・B・B POTTERS(スリービーポッターズ)」店頭と小値賀島「おぢかアイランドツーリズム」で販売される。価格は、3500円(税別)。

また、今後九州産業大学の学生・安田さんのアイデアで生まれたブローチをマグネットに加工した製品も商品化。明治後期から100年以上続く、小値賀島の活版印刷所「晋弘舎」と組んで、小値賀島の新しいお土産として販売を開始する予定だ。