タイの感染症問題に貢献
アース製薬は化学合成殺虫成分を使用せずに蚊を駆除するスプレーを発売する。花王が開発した「蚊の羽を濡らすことで飛行を妨げる」技術を応用。タイに現地法人を持つアース製薬の販売網と花王の新技術を組み合わせることで、東南アジア諸国を中心に課題となっている蚊による感染症問題を解決する狙いだ。7月にタイで発売予定。3年で数億円の売上規模を目指す。
新商品は「ARS Mos Shooter(アース モスシューター)」。細かいミストを連続で噴射し、飛行中だけでなく潜んでいる蚊にも効果を発揮する。競合の虫ケア用品と比較し、従来の化学合成殺虫成分を使わないため、子供がいる環境などでも使用しやすい点が強み。「レモングラス」と「フローラル」の2種類の香りを用意。内容量は370ミリで、価格は138バーツ(約600円)を予定している。
アース製薬は1980年にタイで現地法人を設立した。現在では虫ケア用品「ARS」ブランドをはじめとする商品の開発から物流までを担っており、タイにおける虫ケア用品のシェアは2023年時点で16.5%。タイでは蚊が媒介するデング熱などの感染症が社会問題となっている。
蚊の駆除は、現状ではピレスロイド類を用いた殺虫剤が使われているが、耐性を持ち駆除できない蚊が東南アジアなどで増加しているという。地球温温暖化や都市化の影響で蚊の生息エリアが拡大し、2023年のデング熱感染者は過去最多を記録した。
花王は2023年に「理化学研究所脳神経科学研究センター 知覚神経回路機構研究チーム」と共同で、表面張力の低い界面活性剤水溶液を蚊に付着させることで、蚊の飛行行動を妨げることを発見。蚊の体表の空気を取り込む気門を塞ぐことで、ノックダウン状態にできることも分かった。この知見を応用し、界面活性剤水溶液をミスト状にして噴霧することで蚊を駆除できる技術を開発した。
化学合成殺虫成分を使用せずに蚊を駆除する技術は、タイ以外のエリアでも需要があると考えており、日本を含めた他国での販売も検討している。同社の虫ケア用品の国内シェアは、2023年時点で56.9%。コロナ禍明けで市場全体が伸び、同社のシェアも伸長した。
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