広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているのでしょうか。本コラムではリレー形式で、自身の考えをお話いただきます。
奈良県 宇陀市秘書情報課の森山博之さんからの紹介で、今回登場するのは奈良県吉野町 町長公室広報広聴室の井上紀子さんです。
Q1:現在の仕事内容について教えてください。
はじめまして。
歴史好きの方ならきっと知ってる「吉野町」の井上紀子と申します。はじめに吉野町をご紹介します。
吉野町は奈良県のほぼ中央に位置する、人口は6千人に満たない小さな自治体です。昭和31年に6か町村が合併して生まれ、来年には合併70周年を迎えます。また、昨年世界遺産登録20周年を迎えた「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産を有する町でもあります。
町の中央部を東から西に吉野川(紀ノ川)が流れ、町域の一部は吉野熊野国立公園に指定されています。また春には吉野山の桜が絢爛豪華に咲き乱れ、人々の心を魅了します。
「吉野」は古くは古事記、日本書紀、万葉集にも記述があり、『今昔物語集』をはじめとする説話集などでは神や妖・仙人が住む神秘の世界として紹介され、役行者をはじめとする多くの宗教者たちは信仰の聖地として吉野に集いました。
また歴史の舞台に幾度も現れ、天武・持統天皇、藤原道長、源義経、後醍醐天皇、豊臣秀吉など著名な人物も多く訪れました。
このように、古くから人々を惹きつける地であった吉野。今年新たなシティプロモーション戦略として「挑戦の地、吉野」を始動しました。消滅可能性都市下位10自治体の一つとなり、これまでも関係人口の増加や移住・定住を推し進めてきましたが、この戦略は、修験道の聖地や歴史上の人物の再起の場、多くの文学者に愛されてきた場所であるといった要素を軸としてブランディングを展開し、移住者を受け入れ、その人々の新たな挑戦を応援するための施策を進めるというものです。