行政と市民をつなぐパイプ役としての広報誌づくりを目指したい(奈良県宇陀市の森山博之さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているのでしょうか。本コラムではリレー形式で、自身の考えをお話いただきます。宮城県涌谷町の金野暁さんからの紹介で今回登場するのは、奈良県宇陀市役所秘書広報情報課の森山博之さんです。

avatar

森山博之氏

奈良県宇陀市役所秘書広報情報課

大学卒業後、奈良の地銀に就職。出納、窓口、融資、渉外と銀行の業務を経験。「多くの人を幸せにしたい」との思いで転職を決意し奈良市役所に。会計課、秘書広報課に勤務。長男・次男が生まれ、自宅の近くの市役所で勤務すると子育てにも参画でき子どもとの時間が取れるとのことから地元宇陀市に再転職。現在は秘書広報情報課で広報担当として勤務。

Q1:現在の仕事内容について教えてください。

私の所属している「秘書広報情報課」では、秘書業務・広報業務・情報業務の3つの業務があり、3つの課がひとつになったような、それぞれに専門性のある仕事をしています。そのうちの広報業務を新規採用職員と2人で担当しています。また、選奨に関することや、市長・副市長の秘書用務の補助や要望書の受付など、秘書業務の一部も担当しています。

Q2:貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

月1回(約28ページ)の広報誌の企画・取材・撮影・編集・レイアウト・発行や、市公式ホームページの管理・運営、SNS(Facebook、X、Instagram)の発信などを行っています。

広報誌では毎月4ページの特集記事を作成し、市民にとって身近な問題とそれに対し市が重点的に取り組んでいる施策をテーマに取り上げています。また、コーナーを多く設けているのが特徴です。

Q3:ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。

広報誌には、市民の方を多く登場してもらい、宇陀市らしい愛着を持ってもらえる広報誌を目指しています。写真を多く取り入れ、表紙にはインパクトのある写真で若い方から高齢者まで多くの方に手に取ってもらい、読んでもらえるよう、日々奮闘しています。イベント等では、カメラを片手に走り回っています。

また、限られたページの中で、市民にできるだけわかりやすく伝えられるよう、漢字や英語表記の際は小学校高学年が読める範囲での掲載や、フリガナを付けるなど工夫を行っています。また、作成する際に、自身が分からないところや、疑問に思うことは納得がいくまで担当者に確認し、記事をまとめています。

広報誌の取材をきっかけに知り合った市民の方とも、納得のいくまで何度も修正を重ね広報誌を完成させるため、市民の方との信頼関係もできました。その後も声をかけていただいたり、別のところで力になっていただけたり、この仕事を通じて人との縁が大切であると感じています。

Q4:自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。

広報誌担当での苦労は、やはり専門性があることだと思います。写真、レイアウト、機械操作、全て初めてのことで、異動すると早速それを使いこなしていかないといけないプレッシャーがあります。一眼レフカメラを持つことも初めてで、広報担当者というだけで上手な写真を撮ると思われます。

初めて行った取材で、担当課の上司から撮った写真のダメ出しをされ、1枚も使ってもらえなかったことなどありました。その経験から、今では独自で学び、レイアウトなども日々勉強中です。

私自身、広報を担当して3年目で、7年目の方と一緒に広報誌を作成していましたが、今回の人事異動で、新規採用職員の方が配属され、教える立場になってしまいました。新規採用のため、行政経験も初めてで日々の業務がある中での、指導は難しく、具体的な手順やスキルを丁寧に相手のレベルに合わせて教えることに時間がかかってしまいます。広報の締切日がある中で、自身の広報作成と後輩の指導に追われる毎日です。広報誌の作成は専門性があるため、慣れるまで時間がかかるので苦労します。

また、担当課から出てくる記事の多さに苦労します。1つの記事に、事業の目的や経緯、市の思いなど、ありとあらゆる内容の原稿が届きます。要綱やチラシが届く場合もあります。1ページに7枚の原稿は掲載できません。限られた紙面に収まるはずもなく、短くまとまると「掲載されていない」といわれることもあります。最近、市公式ホームページをリニューアルしたことに伴い、広報誌とホームページを連携させ、広報誌には必要内容のみ掲載し、詳しくはホームページを見てもらうようにするなど、工夫しています。

自治体広報ならではのやりがいについては、市の広報誌のため、多くの市民の方が手にしていただき、特集の内容が良かったなど聞かせていただくと、もっと良いものを作ろうと思います。時々、ご指摘をいただくこともありますが、隅々まで読んでいただけているとポジィブにとらえています。

近畿市町村広報紙コンクールや、全国広報コンクールで何度か受賞や入選させていただき、自身が作成した特集の広報誌のときは、特に嬉しくこれを励みに頑張っています。

今後も、行政と市民をつなぐパイプ役としての広報誌作りに努めていきたいです。

【次回の担当者は?】
奈良県吉野町 政策戦略課広報広聴室  井上紀子さんです。

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ