個人やチームの「挑戦」を自薦・他薦で募り、投票で入賞者を決め表彰している東レ。成果を評価する既存の表彰制度とは異なり、挑戦そのものを讃える「はじめの一歩賞」は、なぜ生まれたのか、社内にどのような変化が起き始めているのか。
(本稿は広報会議2025年8月号より転載しています)
2024年11月、東京・日本橋にある東レ本社で「東レグループ社員フォーラム」が開催された。グループ社員が全国の拠点からオンライン視聴する中、プログラムの一つとして「はじめの一歩賞」の表彰式が行われた。
挑戦する人にスポットライトを
「はじめの一歩賞」は、挑戦した個人やチームの意欲そのものを讃える制度だ。その特徴は、活動規模や成功・失敗を問わないこと。応募は自薦・他薦いずれも可能で、上司の承認も不要だ。事務局による一次審査の後、全従業員が参加できる投票で入賞者が決まる。
はじめの一歩賞の告知は、イントラネットなどで行い、「成果よりも一歩踏み出した事実を讃えたい」と、この賞に込めた思いを伝えた。
応募される挑戦事例は、事業での新たな取り組みや、業務改善、職場環境向上の試みなど実に多様だ。2回目の開催となる2024年度の「はじめの一歩賞」では、「短距離走トップアスリートのウエア開発」「育児休職、看護・介護休暇の取りやすい職場づくり」「VRを使った故障時対応のスピードアップ」など、5つの挑戦が表彰された。
一方で東レは、「社長賞」をはじめとする各種表彰制度を長年続けている。では、なぜ挑戦する意欲を讃える賞の立ち上げが必要だったのか。
理念と現状のギャップ
きっかけは、2022年1月のコーポレートコミュニケーション企画推進グループ(現・コミュニケーション企画推進室)の発足だ。情報発信戦略の立案を担う同グループで、「はじめの一歩賞」の立ち上げにかかわった勝野裕士氏はこう振り返る。
