コンバージョンから事業の継続的な成長へ チャットマーケティングの活かし方

事業のサステナブルな成長のために、顧客接点をどのように捉え、どう活用すべきか――。アウディやヤフー、ソフトバンクなどでマーケティング組織を率いてきた井上大輔氏と、「DMMチャットブーストCV」を提供するAlgoage(アルゴエイジ)の成田穂高氏が話し合った。顧客の深層にあるニーズを捉え、事業を持続的に成長させるためのヒントを探る。

「抽象的なコンセプトありき」で考える

成田:デジタル技術の進化や顧客行動の変化などを背景として、企業にとっての顧客接点が広がっています。「チャットマーケティング」を提案しているAlgoageは、クライアントのデジタルでの顧客接点の一部を支援していますが、その重要性は増していると考えています。井上さんはどのようにお考えですか。

井上:顧客側の視点ではリアルかデジタルかは特に意識していないので、溶けあうような環境になっているといえます。一方で、対応する企業側はそうなっていません。テレビはテレビの、デジタルメディアはデジタルメディアのルールや業界があります。消費者側はリアルとデジタルが融合しているのに、サービスを提供する側が分かれているので、プランニングを実行していく際の難易度は上がっている印象があります。

写真 人物 井上大輔氏

井上大輔氏/OFFICE pianonoki代表。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディでマネージャーを歴任。ヤフー(当時)のMS統括本部マーケティング本部長、ソフトバンクのメディア統括部長などを経て現職。個人事業主としてマーケティングやマネジメントをテーマとした執筆・講演・企業研修などを行うほか、上場企業の執行役員としてマネジメントの実務にも現役で携わる。

 

成田:そうした環境で、リアルとデジタルをまとめてマネジメントしていくために重要なことは何でしょうか。

井上:プランニングの際に、ブランドとの接点はテレビとデジタル以外にもたくさんあるという視点で考えることが大事です。それらを統合していくためにはお客さまの目線をカスタマージャーニーで捉えることが有効です。

ただ、このカスタマージャーニーも次善策でしかありません。なぜなら、それで見えるのは良くてお客さまの最大公約数でしかありませんし、私たちがお客さまをコントロールできるという考え方が現実的ではないからです。カスタマージャーニーで、お客さまの視線に少しでも近づく、という意識を持つことが大切だと考えます。

また、リアルとデジタルをまたいでコミュニケーションに横串を通すためのテクニックとして、「まず抽象的なコンセプトを文章で考える」というアプローチをお勧めしたいです。スルーザラインの広告キャンペーンを考えるにあたって、これを実現すればこういう理屈でこのキャンペーンの目的が達成される、という計画を、100〜200文字程度の簡潔な文章でまず整理するのです。

例えば、浸透率を上げたい牛乳ブランドの広告キャンペーンなら、「このブランドはワーキングマザーを応援している、というスタンスを明確にし、それを言葉だけではなく行動でも示すことで、売り場で選択される確率を上げ、浸透率を最大化する」などと、あえて抽象的な文章でコンセプトを固めます。

その後、これを起点として、「テレビCM」「デジタル広告」「SNS施策」「店頭施策」などにおける具体な展開を企画・開発していくことで、これらのタッチポイントに一本のしっかりとした横串が通るのです。

顧客理解を深め、事業のサステナブルな成長を支援する

成田:なるほど。抽象的なコンセプトを基軸に顧客と接することで、あらゆるタッチポイントでの一貫性が生まれるということですね。しかし、そのコンセプトを導き出し、さらに顧客の心を捉え続けるためには、生きた顧客の声に耳を傾けることが不可欠だと感じます。この点について、井上さんはどのように考えますか?

井上:まさにその通りです。抽象的というのは、本質的ということでもあります。フォーカス顧客はこのタレントを使ったこういうCM表現が好きそう、ということを判断するより、先ほどのような抽象的なコンセプトを考え出すほうが、より難しく、より本質的な顧客理解が求められることは想像に難くないでしょう。

このとき、対面やチャットでの対話から得られる気づきは、そうした深い顧客理解の大きなヒントになるのではないでしょうか。

成田:興味深いですね。私たちが提供する「DMMチャットブーストCV」は、多くの企業様にコンバージョンを上げるためのソリューションとして認知・活用していただいています。しかし、コンバージョン増はとても重要な成果ですが、本当に目指しているのはその先にあって、事業をサステナブルにしていくことだと考えています。

写真 人物 成田穂高氏

成田穂高氏/Algoage 執行役員 チャットブースト事業部事業責任者。ソフトバンクを経て、サイバーエージェントでDSP事業の新規事業を責任者として立ち上げ、Rettyにて広告グループのマネージャーを経験し、2022年にAlgoageに参画。「DMMチャットブーストCV」事業責任者兼執行役員として、事業拡大と市場浸透の推進に従事する。

 

クライアントから受ける相談内容も、管理職や経営層の方からはどうすれば自社がサステナブルに成長していけるかという内容が多い印象です。チャットのコミュニケーションのデータからは、例えばどれくらいマーケット規模があるのかという推論もできますし、そうした問いに対しても向き合っています。

井上:事業がサステナブルにならない典型的な理由のひとつが、お客さまを見失うということではないでしょうか。お客さまの支持を失えば、それはどんな事業も継続できなくなるでしょう。チャットやインタビュー、1対1で対話を続けることで、そうなってしまう前に、ある種の「警告」を受け取る仕組みができる。「転ばぬ先の杖」になるわけですね。成田さんがおっしゃるように、チャットがコンバージョンを得る手段というのは一側面でしかなくて、それ以上の広がりがあると考えるべきだと思います。

チャットのコミュニケーション設計は広告クリエイティブの原点

成田:「DMMチャットブーストCV」では、サイト訪問後に離脱しそうなユーザーとLINE上でコミュニケーションを取り、購入や会員登録を促します。もちろん購入や登録といったコンバージョンは重要ですが、継続的な関係構築を目指すときにどのようなコミュニケーションをすればいいのか。それによってどの仮説が立証されるのか、といった視点ですべての応答を作成しています。

スライド DMMチャットブーストCVとは

 
井上:仮説という話が出ましたが、顧客理解の重要なキーワードの一つですね。顧客はどこまでいっても他人である以上、「理解」することは実は永遠にできないというのが持論です。その意味で、顧客との対話は、絶え間ない仮説のブラッシュアップであるとも言えます。そうしたコミュニケーション設計はクライアントと話をしながら決めているのですか。

成田:はい。私たちから提案し、目的を説明して検討します。ただ、同じ応答をずっと続けていくとは限りません。予算規模の大きな会社は勢いよく顧客を獲得していくので、持続的に成長していくためには常に新しいWHOを見つけていく、あるいは同じWHOでも新たなWHATを見つけてメッセージを進化させていく必要があります。

そうしたクライアントのご担当は、常に新しいWHOやWHATに思いを巡らせているものです。私たちもそこをキャッチアップして、仮説を立証しましょう、新しい問いをつくりましょうというやりとりができるのが理想的です。私たちはパートナーとして、クライアントと同じ方向を見てサービスを展開していきたいと考えています。

井上:チャットのコミュニケーション設計を考えることは、広告のクリエイティブ設計と同じですね。広告クリエイティブはもとをたどればものを売るためのツール、いわばセールストークです。ストレートに「買ってください」では人の心はなかなか動かないので、様々なコピーやデザインを考えては検証していくわけです。その過程は、どんなコミュニケーションがコンバージョンを生むのか、というチャットの磨き上げと通底しているのではないかと感じました。

デジタル広告の落とし穴のひとつは、心の変化の結果でしかない数字の変化を、あたかも目的であるように錯覚してしまうことだと思います。A/BテストでBを採用するとなったとき、その裏にある顧客の心の変化に思いを巡らせることがあまりない。チャットマーケティングはこのような状況をある意味原点に戻すきっかけのひとつになるかもしれません。

成田:A/Bテストの結果に洞察がないという指摘は私も同感です。CTRが高いからという理由だけで、なぜそうなったのかという点に立ち戻らないと再現性のあるクリエイティブは量産できません。

私たちはLINEに流入してきたそれぞれのユーザーが、どのメディアのどの施策から流入したかも分かるので、クリエイティブがなぜ当たったのかをチャットを使って答え合わせすることができる。そのような循環を広告代理店などのパートナーと組んで実現することができれば、私たちの提供できる付加価値は上がっていくのではないかと思っています。

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お問い合わせ

株式会社Algoage

Email:sales@algoage.co.jp
住所:東京都文京区湯島3-2-12 御茶ノ水天神ビル4F


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