「資本主義をハックする」営みを鮮やかに示す一冊~『THINK PUBLIC』に寄せて(山口周)

杉山恒太郎さんの『THINK PUBLIC』は「世界の公共広告の傑作選」ですが、これはまた同時に「世界経営アジェンダの最高の見本」でもあります。ここに収められたキャンペーンの数々は、世界を観察し、まだ誰も言語化できていなかった課題=アジェンダを生成し、洗練されたコミュニケーションによって世に訴えています。

知的生産は「アジェンダ設定」→「仮説構築」→「情報の収集・分析」→「アウトプット」という流れで進みます。現在、AIの進化によって「情報の収集・分析」以下のプロセスは飛躍的に効率化されつつあり、差別化の鍵は最上段にある「アジェンダ設定」に移りつつあります。だからこそ「アジェンダ設定の最高の見本」である本書の価値が、これまで以上に際立つのです。

さらに、この本の面白さは、資本主義を象徴するツールである広告を使いながら、社会に公共性を取り戻そうとするプロジェクトの集積としても読める、という点です。これは、僕が以前から言い続けている「資本主義をハックする」という営みの、もっとも鮮やかな実例でもあります。資本の力を逆手に取り、社会に新たな問いを突きつける──『THINK PUBLIC』は、その可能性を体現した一冊です。

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山口周(やまぐち・しゅう)

独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。株式会社ライプニッツ代表。
1970年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。
著書に『人生の経営戦略』『クリティカル・ビジネス・パラダイム』『ビジネ
スの未来』『ニュータイプの時代』『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛え
るのか?』『武器になる哲学』など。

『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』杉山恒太郎

(著) 河尻亨一(編集協力)
定価:2200円(本体2000円+税)
ISBN 978-4-88335-628-7
 
小学館「ピッカピカの1年生」、サントリーローヤル「ランボー」などで国内外の広告賞を多数受賞し、世界最大級の広告祭・カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルの国際審査員を3度務めるなど、国内外で活躍するクリエイター 杉山恒太郎氏。
国内外のクリエイティブを熟知し、考察し続けている杉山氏による新刊『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』で取り上げる広告は、一般的に「公共広告」と呼ばれているものが多くあります。「公共広告」と聞くと、非営利団体や行政、国連関連組織によるキャンペーンを想像する方が多いかもしれません。しかし、本書では企業による公共サービス型の事例も織り交ぜながら、さらに一歩踏み込み、氏はこれからの広告のあるべき姿とし「THINK PUBLIC」を提言します。
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宣伝会議 書籍編集部
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宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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