2025年7月に福岡で開催された「マーケティングサミットリージョナル2025」から注目のセミナーをレポート。ピエトロの高橋泰行氏は、同社が取り組むファンベース経営における、社員の一体感や意識の向上の重要性について紹介。西日本鉄道の花村武志氏からは、ONE FUKUOKA BLDG.を起爆剤にした天神・九州全体の活性化という壮大なミッションへ向けた同ビルのブランディング戦略が語られた。
ピエトロが先代から受け継ぐもの、新しく加えるもの
ピエトロといえばドレッシングで知られるが、スタートは1980年にオープンしたパスタ専門店「洋麺屋ピエトロ」であった。注文されてからパスタを茹でるため、待ち時間にサラダを提供するように。そのときに厨房で作っていたドレッシングが今のピエトロの礎となっている。
創業者の村田邦彦氏は、39歳で脱サラし、一代で東証一部までのし上げたカリスマ性の高い人物だったと2代目代表取締役社長の高橋氏は語る。先代から受け継いでいるのは、経営基本方針とスピリッツ。特にスピリッツの1つ「平凡な会社は生き残れない。唯一無二のピエトロを。」の「唯一無二」という言葉を強く意識し、レストランと食品の2つの柱がある同社の強みとして「目の前のお客様が笑顔になるものを作る」、その原点を大事にしていると話す。
一方で新たに、ピエトロが目指す未来を明確にした。コロナ禍で先が見えない時期に社内で「夢のある話をしよう」と提案。未来創造プロジェクトを中心に、「10年後、ピエトロはどうなっていたいか」というテーマで全社員がグループワークを実施。社員から2000以上の想いが集まり、それをまとめ、「“未来へ” しあわせ、つながる。」という『PIETRO VISION』が完成した。
ピエトロのファンベース経営とは
2000以上集まった社員の想いの中には、「日本一ファン想いの会社」「働く私たちがいちばんのピエトロファン」など、「ファン」という言葉が入ったものも多くあった。高橋氏はファンについて、企業やブランド価値、物語を支持してくれる方のことだと定義。社員も交えたファンイベントを定期的に実施し、ファンとつながり、意見を取り入れることを大事にしている。
また、ファン同士、そしてファンと社員がオンライン上で交流できるファンコミュニティ「ピエトロホームタウン」を運営しており、そこでは、家庭菜園キットを送付し、部員それぞれが自宅で苗の植え付けをしながら交流する「おうち菜園部」など、楽しい企画を実施中。ファンの声には役員も目を通し、レストランや工場にも共有されている。
会社の成長は、社員の成長の総和
同社では、全社員が取り残されることなく成長し、一体感を図るため、様々なプロジェクトを実施している。例えば、福岡県内の保育園に訪問し、ピエトロドレッシングを使って楽しみながら野菜を食べてもらう食育イベントを実施。野菜嫌いだった子どもが喜んで食べてくれる姿を目の当たりにする感動体験を味わう機会を設けている。また、2年目の社員が後輩となる新入社員の入社式のためにウェルカムボードやメッセージカードを作成することで社員同士の絆を深める機会を創出している。
「社員が幸せを感じ、いきいきと働ける環境が、ファンベースにもつながる。人を大切にする経営は、時間がかかる上に数値化できないため、焦りや不安が付きまとうが、続けていくことが大事」だと高橋氏は締めくくった。
天神の新しいランドマークONE FUKUOKA BLDG.
西日本鉄道の花村氏は、天神の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の中核となるONE FUKUOKA BLDG.(通称:ワンビル)について紹介した。
2025年4月にオープンしたワンビルは、地上19階・地下4階建てで、地下鉄に直結し、天神交差点の一角にそびえ立つ新しいランドマークだ。5階には西日本鉄道が直営する天神福食堂、6にはカンファレンスホールやドリンクを購入すると自由に利用できるスカイロビーがある。また7階には、米国を拠点とするCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)がオープンし、スタートアップ企業を中心に国内外の企業がイノベーション・コミュニティを創出する場となっている。8階から17階がオフィス、18階・19階がホテルといったフロア構成だ。
開発コンセプトは「創造交差点~meets different ideas~」
コンセプトを創作するにあたり、ヒントになったのはチャールズ・ランドリーの著書「創造的都市」と、リチャード・フロリダの著書「クリエイティブ資本論」であった。クリエイターが街を変革させ、その才能・技術・寛容性がそろっている場所で価値あるものが生み出されるというもの。目指す交差点の方向性として、アジアと福岡・アジアと九州の創造の交差点であること、働きと暮らしの創造の交差点であることを根底に、常に新しいビジネスと文化が生み出される場所にしたいという思いから生まれたと花村氏は明かす。
ワンビルが「創造交差点」であるために、プロジェクトを協働する天神明治通り街づくり協議会が掲げる「アジアで最も創造的なビジネス街」の実現もふまえ、「創造」(CIC FUKUOKA)、「交流」(スカイロビー・ホテル・食堂)、「集客」(カンファレンス・バンケットホール)の機能を兼ね備えた、街の共用部を設けたこともこだわりの1つである。
ひとりでは叶えられない夢「ワンビルのブランディング」
花村氏はブランディングについて、企業理念や商品サービス、品質を整理して価値を構築するべきだと語る。
ワンビルのブランディングにおいては、「天神の過去の出来事や歴史から学んで未来を切り開く伝統と革新の融合を軸に、街の共用部となるハード面と、創造交差点となるソフト面を構築した。市民と天神ワーカーの生活を豊かにする商業施設として、ファッション・食・アートなど、天神らしい感度の高さと多様な人々を受け入れる居心地のいい敷居の低さをミックスさせた」と語り、他企業との協働やコラボレーションがあってこそであり、ひとりではたどりつけない夢が実現できたと締めくくった。
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