コピーライティングは、経営コンサルティングにどう効く? 3つのクイズで読み解く

言葉と経営、コピーライターとコンサルタント。一見、異なるもののようですが、実のところ、双方はつながっていたり、掛け合わさっていったりしているのではないか。そう語るのは、10月に開講する『コピーライター養成講座 山田聰クラス 「言葉と経営」ゼミ』の講師を務める、山田聰さん。
 
コピーライティングとコンサルティングの関係を、できるだけわかりやすく解説していただきました。

はじめまして。山田聰と申します。コピーライター出身で、博報堂コンサルティングという会社でマネジャーを務めています。

「コンサルティング」を仕事にしているのですが、Excelは苦手で、「マクロ?」とか「VLOOKUP?」とか聞くと「ひゃー」となるタイプです。それでもなんとかかんとか、前身組織からの通算だと3年くらい、コンサルティングファームでまがりなりにもマネジャーを担当させていただいています。そんなふうにコピーライターがコンサルファームで生き残れているのはなぜか…?

改めて考えてみたところ、それはコピーライティングの技術が、経営コンサルティングの世界でも意外と役立つからではないかと思い至りました。

この記事では、「コピーライティングは、経営コンサルティングにどう効くのか?」という問いに対して、個人的に感じるところをご紹介させていただきたいと思います。お気に入りの「クイズ」を交えつつご紹介したいと思いますので、クイズの部分はすぐに先を読まずに、ちょっと考えてお読みください。

クイズ1:正しい「記事の見出し」とは?

まず、1つ目のクイズです。あるジャーナリストが高校時代に受けたジャーナリズムの授業での一幕です。

教師は、生徒たちに手動タイプライターで新聞記事のリード(導入文)を書くよう課題を出しました。そして、次のような事実をまくしたてます。

「ビバリーヒルズ高校のケネス・エ・ピータース校長は今日、次のように発表した。来週木曜、同校の教員全員がサクラメントに行き、新しい教授法の研修を受ける。研修会では、人類学者のマーガレット・ミード、大学の学長であるロバート・メイナード・ハッチンス博士、カリフォルニア州知事のエドマンド・“パット”・ブラウンらが講演を行う」

生徒たちは、この情報を元に、タイプライターを叩き始めます。多くの生徒が、「木曜日、サクラメントでパット・ブラウン州知事、マーガレット・ミード、ロバート・メイナード・ハッチンスがビバリーヒルズ高校の教員を前に講演をする…」といった具合に、事実を並べ替えてリードを書きました。教師は生徒たちのリード文に目を通すと、しばらく沈黙した後、「正解」を言いました。

さあ、ここでクイズです。教師が語ったリード文の「正解」とは何でしょうか? 少し考えてみてください。

正しい「記事の見出し」とは?

…正解は、「来週の木曜は休校となる」でした。(出典:チップ・ハース、ダン・ハース『アイデアのちから』を元に筆者が一部改変)

このジャーナリストは答えに息を呑み、「ジャーナリズムとは事実を反復することではなく、ポイントを見つけること」「誰が、いつ、どこで、何をしたかを知っているだけでは足りない。それが何を意味するのか、なぜそれが重要かを理解する必要がある」と気づいたと語っています。

コピーライティングも、このエピソードで示されている「多数の情報から、意味ある重要なコアを射抜く」技術だと思うのです。商品やサービスの情報、魅力や強み、価値を一言のコピーで表現するために、その仕事における「コア」はどこにあるのかを考え続ける。

そして、「コアを射抜く」ことは、経営課題に向き合う経営者やコンサルタントにとっても同じように重要です。コンサルティング業務で経営層のみなさまと接していると実感することなのですが、経営者は、既に無数の情報を持っています。絶え間なく上がってくる上申資料、調査データ、現場の声、顧客や世の中からの声…。情報が足りないことではなく、情報がありすぎることが問題なのです。その中から、何がコアなのかを見抜き、言葉にする。この技術や経験こそ、「経営」畑に対して、コピーライターなどの「広告」畑の出身者が貢献できる領域だと感じています。

次のページは、クイズ2:子どもたちが立っていられた理由とは?

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