富士通式 デジタルセールスの組織戦略とは?インサイドセールスで実現した“売り方改革”

デジタル化やABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の広がりを背景に、営業組織のあり方が問われている。そうした中で、富士通は4年で130人規模のインサイドセールス組織の構築、ABS(アカウント・ベースド・セリング)の実施を通じ、営業の精度とスピードを大幅に向上している。

9月に開催された「第5回 営業戦略会議」では、同社でデジタルセールス(インサイドセールス)組織の立ち上げと運営を担う友廣啓爾氏が登壇。営業組織の再設計に必要なチェンジマネジメント、CRMを軸にしたデータ活用、ABSの実践などについて語った。

写真 人物 友廣啓爾氏

「先発完投型」から「分業・データドリブン型」へ

講演の冒頭、友廣氏は「営業のあり方を変えたかった」と組織変革のいきさつについて語った。かつての富士通は、PCやサーバーなどのハードウェアを中心とした製品主導型の事業構造であり、営業スタイルもいわゆる「先発完投型」が当たり前だったという。だが、事業改革を進める中で、グループの再編や売り先・売り方の見直しが進み、より顧客起点の営業体制が求められるようになった。

友廣氏は、自ら立ち上げたデジタルセールス組織の特徴を「ハンター型の営業」「顧客起点の組織」「データドリブンな業務運営」の3つに集約する。最初はわずか3名から始まったチームは、実績とROIをレポーティングしながら着実に組織を拡大。従来の営業部門とは異なる「分業型モデル」を導入し、現在では130名規模にまで拡大した。

ABS・AI・CRMを駆使した営業の科学化

営業活動の精度を高めるために、テクノロジーの活用も積極的に進めている。音声通話の自動文字起こし、PDFや動画など非構造データの検索、セールスフォース上での全情報の蓄積といった仕組みに加え、案件の質を9項目各4段階で自動評価するAIツールも導入。「CRMを使わないと成り立たない組織」をあえて設計することで、全社で最もCRM活用が進んだチームになっているという。

プロダクト軸ではなく、「顧客軸」で組織編成されているのも大きな特徴だ。営業ターゲットの設計にも、従来のロングテール型から大きく舵を切った。あえて企業を魚に例え、「鯨(エンタープライズ)」「マグロ(ミッドマーケット)」「イワシ(スモールカンパニー)」はそれぞれ漁場も漁法も異なるため、適したアプローチを設計が必要だと解説。とりわけ大企業に対しては、IT部門以外の部署にも積極的に接点を持ち、いわば「氷山の下」にある潜在案件の発掘を重視するスタイルを採用している。

働きがいと成果が両立する組織づくりへ

人材育成やカルチャー形成にも力を注いでおり、18のキーアクション項目からなる独自のスキル体系や1ヶ月間の集中研修、完全オーダーメイドの個別教育を実施。メンバー同士がお互いに褒め合う文化や360度評価の導入など、若く柔軟な組織風土づくりにも取り組んでいる。

講演の最後に友廣氏は「デジタルセールスの話ではあるが、本質は組織論でありチェンジマネジメントの話。これからも失敗談を含めて積極的に発信していきたい」と語り、セッションを締めくくった。

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