この本を読むと、「広告って面白いな」とつくづく思う。もっと言うと、「そうだ、広告って面白いものだったのだ」と思わせてくれる。
僕たちは、いつの間にか「広告の面白さ」を忘れていたような気がする。
「広告は芸術と科学から出来ている」と言いながら、この所、ずうっと「科学」に「芸術」は押しまくられているような気がする。「アイデアよりデータ」と言いきる人たちが「広告は、もう終ったのですよ」と、したり顔で言うこの頃だ。僕たちは、「人のココロが動く不思議さと面白さ」から、あまりにも永く離れていたのではないか。
この本のどのページを開いても、思いがけないアイデアや表現が、一見とても解決困難な状況や状態をいともあっさり解決してしまう快感で溢れている。そう、いい広告には「説得される快感」がある。クスリと笑いながら「なるほどね」と呟いてしまう。
杉山恒太郎さんは、公共広告のことを「広告のための広告」とも言っている。
欧米の広告制作者たちは、公共広告を自分たちの広告の技術が、社会を変える力、何かを生み出す力になり得ることを世の中に示すために、特別な思い入れで作っている。つまり、その国の公共広告は、その国の広告をつくる技術のレベルをも示している。
もちろん、日本にも「AC」という公共広告機構があるが、残念だけれど日本の広告制作のレベルの高さを示すようなものにはなっていない。それは、ACが「オンエア第一、掲載第一」を掲げているので「有名タレントが無料で出演します」ということだけで、表現が選ばれたりしているからだ。
杉山恒太郎さんのこの本の狙いは、きっと企業の経営者やマーケティング担当の人たちに向かっているのだろう。「Think Public」は、「広告の社会的価値への理解」を含んでいるのだと思う。「よい広告主こそが、よい広告を生む」は永遠の真理だ。「炎上よりも、無難」と言って、広告の活力や冒険が削られていては広告は痩せ衰えていくばかりだ。
この本には、広告の明るい可能性がいっぱい詰め込まれている。

『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』杉山恒太郎
(著) 河尻亨一(編集協力)
定価:2200円(本体2000円+税)
ISBN 978-4-88335-628-7
小学館「ピッカピカの1年生」、サントリーローヤル「ランボー」などで国内外の広告賞を多数受賞し、世界最大級の広告祭・カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルの国際審査員を3度務めるなど、国内外で活躍するクリエイター 杉山恒太郎氏。
国内外のクリエイティブを熟知し、考察し続けている杉山氏による新刊『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』で取り上げる広告は、一般的に「公共広告」と呼ばれているものが多くあります。「公共広告」と聞くと、非営利団体や行政、国連関連組織によるキャンペーンを想像する方が多いかもしれません。しかし、本書では企業による公共サービス型の事例も織り交ぜながら、さらに一歩踏み込み、氏はこれからの広告のあるべき姿とし「THINK PUBLIC」を提言します。
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