総再生1000万回突破、「名探偵チロル」が話題 ソーシャル起点の熱量がマスを動かした

長年愛され続ける国民的お菓子「チロルチョコ」が、約20年ぶりとなる本格的なブランドコミュニケーションを再開した。10月10日に約3分間の縦型ショートドラマ「名探偵チロル」4話をオンライン上で一斉配信。「懐かしいお菓子」のイメージから脱却し、現代の生活者との新たな関係を築く狙いがあった。

今回の施策の企画・制作を支援したFOR YOU by ContentAgeは、ソーシャル上で熱量高く語られるブランドをつくることが重要とし、それを示す新しい消費行動モデル「5E MODEL」を提唱している。チロルチョコの取り組みはまさに、ソーシャルの熱量をマスに届けることに成功した例だという。チロルチョコCMOの宮澤豪臣氏と、FOR YOU by ContentAgeの筧将英氏に、その取り組みとこれからの勝ち筋について聞いた。

離反層らへ向けたコミュニケーションに着手

チロルチョコは2021 年から「チロリスト」と呼ばれる熱心なファンとの対話を軸にしたコミュニケーション施策を展開。オンラインの「チロルMTG(ミーティング) 」やリアルイベントの「チロルフェス 」などを開催してきた。

2024年1月にCMOに就任した宮澤豪臣氏は、入社後の約1年間をブランドコミュニケーションの準備期間と位置づけ、顧客分析とブランド価値の再定義に着手した。

チロルチョコ 取締役Chief Marketing Officer 宮澤豪臣(みやざわ・たけおみ)氏
日経エージェンシーに新卒で入社、エンタメ企業専門のアカウントプラニングチームを設立。2006年、ワイズインテグレーションに参画、プロモーション×PR発想を軸に、ファーストフード、製薬会社、などのマーケティング戦略やIP戦略を手掛ける。教育分野の事業開発を経て、代表取締役社長に就任。2024年チロルチョコ取締役CMO(現職)。

定量調査では、15歳以上の認知率が約85%と非常に高い一方、「購入したことはあるが、ここ2~3年は買っていない」という離反層が他ブランドより多いことが判明した。そこで、これまで対話してきたコアファンではなく、離反層へのN1インタビューを実施。「大人になった自分向けの商品ではない」「どういう時に食べるのかシーンが分からない」といった声が浮上した。

宮澤氏は「認知はされているものの、現代の生活における『愛着』や『共感』が薄れている。この課題を解決するために、本質的な価値を伝える活動を始め、再び愛着を育むことが今やるべきことだと確信した」と述べた。

ブランド価値を伝える3分間全4話のショートドラマ

20年ぶりの本格的なコミュニケーションにあたり、今の時代のトレンドに合った新鮮なアプローチが求められる中、課題解決の手段として選ばれたのが縦型ショートドラマだった。「感情に働きかけるには”物語”が重要だと考え、生活者のライフスタイルに溶け込み、プチエンタメとしても楽しまれている縦型ショートドラマが最適だと判断した」と宮澤氏。プランニングを支援したFOR YOU by ContentAgeのチームとタッグを組み、プロジェクトを始動した。

2025年10月10日、全4話の縦型ショートドラマ「名探偵チロル」を同社公式Instagram、YouTube、TikTokで一斉配信した。物語は5人家族の「知良(ちろ)家」を舞台に、次男の知良(ちろ)るいと君が、家族のいざこざや恋のすれ違いをチロルチョコひとつで解決していくコミカルなストーリーだ。

@tirolchoco_official チロルチョコpresents連続ショートドラマ 「名探偵チロル」第4話🎥 「お兄ちゃんと無限チロル事件」 アルバイト先でチロルチョコを過剰発注してしまったお兄ちゃん。 チロルまみれのピンチを、名探偵チロルが「チロっと解決」⁉︎ 【出演】 内藤煌成 山田純大 本島純政 @本島 純政/ Motojima Junsei 安原琉那 福冨タカラ 忠津勇樹 @ただつわたなべ #名探偵チロル #チロルチョコ #ショートドラマ ♬ オリジナル楽曲 – チロルチョコ【公式】

ドラマを通じて伝えたかったのは、チロルチョコが持つ「仲良くなるきっかけをつくる」というブランド価値。その体験を促すメッセージとして「ほら、チロルがあれば。」というキーメッセージを開発し、会話と笑顔が生まれる世界観を表現した。

キャスティングも重視した。主演には、ブランド価値を体現し、情報発信力のある子役俳優として内藤煌成くんを満場一致で起用。「彼がいるだけで周りに会話と笑顔が生まれる。まさにチロルチョコの価値を体現している存在」としている。

広告と分かっていても評価された理由

施策の反響は想定をはるかに超えたという。全4話の総再生回数は1000万回を突破。特に重視していた15秒視聴完了率は、最終話で27%という高い数値を記録し、多くの視聴者がストーリーに引き込まれたことを裏付けた。

コメント欄には「食べたくなった」「買ってきたよ」といった購買意欲を示す声から、コンテンツへのツッコミ、キャストへの好意的な意見まで数多く寄せられ、広告と理解した上でエンタメとして楽しまれている様子がうかがえた。

さらに、ブランドリフト調査では「子供だけでなく大人も楽しめるお菓子だと感じた」「遊び心やユーモアのあるブランドだと感じた」といった項目が大きく伸長。「懐かしい」というイメージからの脱却と、ブランド価値の再認識につながったという。

FOR YOU by ContentAgeの筧将英氏は、「私たちは、ソーシャルを起点として熱量を創り出し、それをマスまで波及させて世の中を動かす『MASS from SOCIAL』のアプローチを推奨しています。『名探偵チロル』はまさにそれが実現したケースといえます」と話す。

ContentAge 常務執行役員CSO/CMO 兼 広告カンパニーCEO 筧将英(かけひ・まさひで) 氏
電通に新卒で入社し、14年間ストラテジックプランナーとしてマーケティング・コミュニケーション・ブランド戦略や商品企画・新規事業開発など多数の大手クライアントからスタートアップまでを担当。またスタートアップ専門組織や他社との協業プロジェクトの立ち上げなどをおこなう。2025年11月広告カンパニーであるFORYOU by ContentAgeのカンパニーCEOに就任。

こうしたアプローチのベースになるのが、同社が提唱するSNS時代の消費行動モデル『5E MODEL』だ。これは「Encounter:出会う」、「Empathize:共感する」、「Engage:信頼を深める」、「Enter:参加する」、「Express:共有する」で構成される。「最初に熱量のあるコンテンツ(熱源)でユーザーを惹きつけ(Enter)、共感や信頼を醸成し、最終的に購買やファン化につなげるという考え方で、今回の施策は、まさにこの『熱源作り』の好例」と述べた。

MASS form SOCIALを実現する「5E MODEL」

イメージ 図

その「熱源」の核となったのが、1話あたり約3分という、ショートドラマとしては異例の「長さ」だ。筧氏は「もしこれが40秒の動画だったら、視聴後の印象やコメントの質は全く違っただろう。3分という尺には、チロルチョコさんの20年ぶりにかける『本気度』や世界観への『思い』が凝縮されている」と分析する。

ショートドラマ的なコンテンツはすでにSNS上に溢れている中で、いかに差別化するかという観点はこれから重要になる。

今回は、チロルチョコの企業としての熱量が視聴者に伝わり、「広告だけど面白い」「満足感がある」というポジティブな反応につながったと見ている。

宮澤氏も「ブランドとして伝えたい共感価値をしっかり描くには、この長さが必要だった。制作チームも我々の本気度を汲んでくれ、一丸となってチャレンジしてくれた結果、どこも削れない、満足感のあるドラマが完成した」と振り返った。

続編も決定し、さらなる展開へ

今回の成功を受け、「名探偵チロル」は続編の制作が決定している。「今回、資産となる『熱源』を作れたことは非常に大きな価値がありました。今後もこのショートドラマ(物語)を通じて、チロルチョコの本質的な価値を伝え続けていきたい」と宮澤氏は意気込む。

筧氏は「かつて広告としての熱源づくりはテレビCMが中心だったが、今は時代が違います。今回のショートドラマは、新しい時代の熱源づくりの成功事例になったのではないか」と語る。宮澤氏も「今回の施策は、ブランド活性化の最高のリスタートになりました。『お久しぶり』と感じていた方々に対し、『チロルチョコって面白いこと始めたな』と再会を楽しく演出できた。ブランドの歴史が長く、活性化が必要な多くの企業にとって、我々の挑戦がヒントになればうれしいですね」と締めくくった。

お問い合わせ

株式会社ContentAge
広告カンパニー(FOR YOU)

URL:https://contentage.co.jp/
所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-19-15 ウノサワ東急ビル3階

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