広告品質は「経営課題」へ
オープニングセッションでは、デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)事務局長の小出誠氏が、デジタル広告が抱える2つのリスクを整理した。ひとつは不適切広告や詐欺広告など、生活者に直接影響が及ぶ“広告内容の問題”。もうひとつはアドフラウドやブランドセーフティ違反といった事業者が不利益を被る“掲載面の問題”である。
小出氏は「広告主が被害者にも加害者にもなり得るのがブランドセーフティ問題だ」と指摘し、総務省が発表した広告主向けガイダンスでも、不正サイトへ広告費が流入する不健全なエコシステムに加担しないように“経営層の理解と責任”が求められている現状に言及した。さらに、「アドベリフィケーションは“余計なコスト”ではなく、失われる広告費を守るための必要投資だ」と強調し、短期的なCPC・CPAのみを追う姿勢が長期的なブランド価値を損なう可能性を示した。
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博報堂のAaaSビジネス戦略局 局長の飯塚隆博氏も、広告主の意識変化を実感していると述べる。「CPAを追求しすぎた結果、再び認知の重要性が議論されるようになった。だからこそ、ブランディングやブランドセーフティへの関心が急激に高まっている」と語った。
AIがプレミアムな掲載面とコスト効率のバランスを取る
博報堂DYグループが提唱する、広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS(アース)」とDoubleVerifyの協業によって生まれたのが「AaaS with DV」だ。同ソリューションは、プレミアムな掲載面を維持しながら、AIで入札を最適化することで、ブランドセーフティとコスト効率の両立を実現するものだという。
飯塚氏は「従来は安全面を強化すると単価が上がるという“トレードオフ”構造があったが、AI最適化によりその壁を崩せた」と解説。実際、導入企業は1年で30社を超え、キャンペーンの継続率も高いという。DoubleVerify側も日本の現状を分析し、「ブランドスータビリティ(適合性)違反がAPAC中でも突出して多い」と警鐘を鳴らし、安全な広告供給の必要性が急務であることを示した。

