総務省は6月9日、デジタル広告の配信を巡る経営リスク対策として「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を公表した。広告を出稿する広告主向けの指針を示し、近年多発しているデジタル広告のトラブルを防ぐ。今回のガイダンスは、2025年4月から5月にかけて行われた意見募集や、有識者会議の議論を踏まえて策定されたもの。
公表を受け、広告関連団体の日本アドバタイザーズ協会(JAA)、日本広告業協会(JAAA)、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)と認証機関のデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が6月16日、啓発のためのセミナーを開く。
総務省は、広告主がデジタル広告の配信先の媒体を把握できていないことによるリスクを指摘する。具体的には、偽・誤情報を掲載する媒体に意図しない広告配信がされることでのイメージ悪化といったブランド毀損や、広告費の詐欺被害・広告費の不正流出といったアドフラウドが発生している点について。こうした状況に、広告主の広告担当者や経営層がデジタル広告の流通を巡るリスクに関してリテラシー向上を図るため、同省は初めて広告主に向けたガイダンスが策定された。広告担当者のみならず経営層がかかわる問題としてガイダンスを取りまとめている。概要は以下の通り。詳細は総務省のWebサイトから閲覧可。
ガイダンスでは、(1)体制構築・目標設定、(2)具体的取り組み、(3)配信状況確認──の3段階でリスク対策が示された。(1)体制構築・目標設定は1.経営層の関与などの体制構築 2.広告配信の目的と指標の設定 3.情報開示。(2)具体的取り組みは 1.契約段階での取り組み 2.品質認証事業者との取引 3.技術的な対策 4.広告プラットフォームの機能の利用 5.配信先の取捨選択。(3)配信状況の確認では、広告プラットフォームが提供する管理画面やレポート機能の確認や意図しない配信を発見した際のブロックリストへの追加──などを列挙。
「経営層にデジタル広告の担務者を配置」や「リスク・対策を取締役会構成員で共有」と経営問題として踏み込んだ提言をしている。また「JICDAQ認証等を取得事業者との取引」を推奨し、さらには広告配信レポートも、成果管理指標だけでなく品質管理指標もチェックすることを推奨している。具体的には、広告費の請求対象外の無効なインプレッションやクリックを示す「Invalid Traffic(IVT)」や、視認可能な広告表示回数およびその1000回あたりの広告費を表す「vCPM(ビューアブル・CPM)」を盛り込むなど、より詳細な品質管理指標を例示している。
総務省の発表資料より
電博もガイダンスに賛同
総務省のガイダンス発表を受けて、広告各社も「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」の目的・趣旨に賛同している。
dentsu Japanは、「ブランドセーフティに関するリスク」「アドフラウドにより広告費が流出するリスク」「デジタル社会の不健全なエコシステムに加担するリスク」などに関して従来から対策に取り組み、「2019年1月からMomentumが提供するブロックリストを導入し、対象となる全ての運用型案件においてブランド棄損につながるような掲出先に広告が掲載されないよう対応をしています」とコメントをしている。
また博報堂もHakuhodo DY ONEと連携しながら対策に取り組む。今回の発表を踏まえてリスクへの対応強化をより進め、デジタル広告市場の健全な発展を目指すとしている。
