『豊臣兄弟!』で注目の「桶狭間の戦い」 信長勝利の背景を戦略視点で分析

天下人となる豊臣秀吉を支えた弟の豊臣秀長が主人公のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』がスタートしました。1月11日放送の第2回では、戦国時代の激戦のひとつとされる「桶狭間(おけはざま)の戦い」が描かれる予定です。

1560年、尾張国の桶狭間で織田信長が今川義元を討ち取り、戦国史を大きく揺るがしました。これにより、若き秀吉が信長に仕える道が開けていきます。

主にビジネスパーソン向けに戦略の捉え方からつくり方を解説した書籍『君は戦略を立てることができるか』(音部大輔著)では、この「桶狭間の戦い」を題材に戦略の要諦を解説しています。本書による戦略の定義は、「目的達成のための資源利用の指針」。目的と資源に着目して桶狭間の戦いを分析すると、また違った視点が得られそうです。(以下は書籍『君は戦略を立てることができるか』より抜粋)

勝負を決めるのは「資源の量」

2人のプロフェッショナルが、同時に、同じ指示と情報に基づいて、同じブランドの戦略を立案し始めました。この2つの戦略は、果たして同じものになるでしょうか。

もちろん、同じにはなりません。では、その理由は何でしょうか。

「異なる人物だから」「経験が違うから」「能力に差があるから」――これらはすべて正解ですが、ここでも根本的な理由は「目的と資源」の2点に集約されます。2人の人格や経験、能力の違いにより、「目的の解釈」と「資源の捉え方」が異なるため、戦略も異なるものになるのです。入力が違えば、出力も違うというわけです。

目的の再解釈は、確かに人によって異なりますが、もともとの目的が同じである限り、その違いはある程度限定的かもしれません。ひるがえって、投下できる資源量については、人によってその見え方が大きく異なります。そして、ここで重要なのは、「勝利する側」は「より多くの資源を活用できた側」であるという観点です。

桶狭間の戦いは本当に寡兵が大軍を破ったのか

この話をすると、「では、桶狭間の戦いはどうなんだ」と聞かれることがあります。歴史に興味のある方はこのままおつき合いください。定説ではないものの、勝利する側が資源量に恵まれているという考え方の一例を示せるかもしれません。


桶狭間の戦い: 概要
1560年、戦国時代の真っただ中に起こった「桶狭間の戦い」は、尾張(現在の名古屋付近)の領主、“尾張の大うつけ”織田信長と、駿河・遠江(現在の静岡県付近)の領主である“海道一の弓取り”今川義元が対峙した合戦です。今川義元は、2万人とも4万人ともいわれる大軍を率いて、尾張へ攻め込んできました。それに対し、織田信長はわずか2000〜3000人の手勢で応戦し、勝利を収めたことで、一般には「寡兵が大軍を破った」例として知られています。

この桶狭間の戦いは、記録が少ないこともあり、歴史家からアマチュアの研究者まで、多くの人々の想像力をかき立てています。ここでは「目的と資源」の視点から、この戦いを見てみましょう。今川義元は、尾張と三河の境にある鳴海城、大高城、沓掛城を手中に収め、大軍を引き連れて尾張へ攻め上ってきました。織田家の立場で見た時、いくつかの目的設定ができそうですが、ひとまず「今川軍の無力化」を目的に設定したとしましょう。すなわち、今川軍2〜4万人が軍事的に脅威でなくなれば成功です。

この目的に対して、さまざまな再解釈案が考えられます。中には、降伏して織田家は今川家に服従するという選択肢も、論理的には否定できません。しかし、信長の野望や性格を考慮すれば、この選択肢は現実的ではないため、ここでは除外して考えます。

再解釈案1 :今川軍2〜4万を殲滅する
2〜4万の兵をすべて打ち倒すことで、今川軍は無力化されます。最も直接的で分かりやすい解釈案ですが、およそ現実的ではありません。この案しか思いつかない場合、すでに敗北が決定的です。

再解釈案2 :今川軍の戦力が消耗し、士気が喪失する
大軍を維持するためには、食糧の確保や武器の補充といった強固な兵站が必要です。戦闘が長引くほど疲労が蓄積し、補給も困難になります。今川軍の補給路を脅おびやかすことができれば、2〜4万の兵数がそのままでも、やる気や体力がなくなり、実質的に無力化できます。

再解釈案3 :今川軍の武将を調略し、戦力を削減する
大軍は必ずしも強固な結束を持っているわけではありません。今川軍の武将を信長側に寝返らせることで、戦力を拮抗状態に持ち込むことも考えられます。完全な無力化ではないものの、撤退を促す程度の影響力はあるでしょう。しかし、当時の信長は「うつけ者(ばか者)」とみなされていたため、義元側から寝返る動機は薄く、加えて工作に費やす時間もなさそうです。

再解釈案4 :駿河で騒動を起こす
駿河(今川の領土)で大地震や大火事といった災害、あるいは大きな謀反が起これば、義元は軍を駿河に戻さざるを得ないでしょう。2〜4万の兵はそのままですが、今川軍が自主的に尾張から撤退することが期待できます。天災はともかく、騒動を起こすことは可能かもしれませんが、ここでも時間が限られているため現実的ではないでしょう。

再解釈案5 :義元の首を取る
今川義元を討ち取れば、2〜4万の兵がそのままでも、今川軍は潰走する可能性が高まります。たとえ潰走までいかなくても、総大将を失った大軍は烏合の衆と化すかもしれません。この案の特徴は、今川軍の兵数に直接手をつけずに、戦力を無力化できるという点です。

結果的に、信長はこの解釈案5を採用し、義元を討ち取ることで勝利を収めました。

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宣伝会議 書籍編集部
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宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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