AIの進化、クライアント課題の高度化など、激しい変化の渦中にある広告業界。東急エージェンシーが事業変革のエンジンとして掲げるのが、「HRX(ヒューマンリソース・トランスフォーメーション)」だ。「一人ひとりを育てること」を経営の核に据え、採用、育成、評価のあり方を抜本的に見直すことで、社員のエンゲージメントは年々向上し、若手社員の離職率は極めて低い水準を誇る。その戦略の全貌を、人事局のキーパーソン3人に聞いた。
事業変革の原動力となる「HRX」とは
東急エージェンシーが2024年度から進めている中期経営計画で、重点施策のひとつに掲げられたのが、「HRX(ヒューマンリソース・トランスフォーメーション)」だ。人事局長の加藤千絵氏は、その背景について「経営戦略と人事戦略を改めてすり合わせ、同じ方向を向いて連動させる必要があった」と振り返る。
「私が人事局に異動した2022年夏以降、経営陣と深く対話しながら人事戦略を大きく変えてきました。経営戦略を実現する大きな基盤として、この中期経営計画で経営戦略を実現する大きな基盤のひとつとして『人材』が位置付けらました。社内に『人事も戦略思考で変えていく』というメッセージを示すことがHRXの始まりでした」と加藤氏。同局「人事企画部」の名称を、2025年に「HRX推進部」に変更したのも、その意志の表れだ。
東急エージェンシー コーポレート本部 人事局長 加藤千絵 氏
目指すのは、「体験価値共創企業」という2030年に向けた中期ビジョンに向け、クライアントの“ベストソリューションパートナー”となる人材を育成することだ。その具体的な施策を、HRX推進部長の岡田直子氏は解説する。
「従業員のタレント(才能)を開花させるため、等級や報酬、評価制度を大きく改定しました。特に評価は、人を成長させるための最重要プロセスと再定義しています。カルチャーとして、マネジメントが部下を育てる役割を明確にし、そのための評価基準も設けています。
個人に仕事が集まるとされる広告業界では、『数字を達成していれば育成は免除』といったケースを聞くこともありますが、当社はそうではないという意思を明確にしました」(岡田氏)
東急エージェンシー コーポレート本部 人事局 HRX推進部長 岡田直子 氏
東急エージェンシーが目指す「みんなで人を育てる」カルチャーを象徴するのが、HRXの取り組みの一つである「人材戦略会議」だ。
「これは単に評価をつけるためでなく、あくまで人を育てるための会議体です。直属の上司だけでなく、ユニット内の様々な視点から『次はうちの部でこんな経験をさせた方がいいのでは』といった議論を5〜6時間かけて行う。一人の上司だけでなく、となりの部署の上司も一緒にみんなでキャリアを考えるこのプロセスが、評価の納得度とエンゲージメントの向上につながっています」(岡田氏)
目指すは「統合ソリューション提供人材」
AIの登場などで広告業界の仕事が大きく変わる中、求められるスキルも変化している。同社では、様々な解釈がなされてきたスキルの定義を「全社共通スキル」と「職種別スキル」に再整備し、目指すべき人材像として「統合ソリューションが考えられる人材」と明確に掲げた。
「クライアントの課題を多面的に捉え、統合的に解決できるのが、これからのベストソリューションパートナーの姿です。例えば、ストラテジックプランニング職を経験した営業が自ら企画を立てたり、メディアプランニング出身のクリエイターが新しいメディアの使い方からクリエイティブまでを提案したり、といったケースです。 このように複数の職種を経験し、最終的に自分の軸を確立しながらも、他の領域の知見を発揮できる人材を『統合ソリューション提供人材』と定義し、育成やキャリア開発の仕組みを大きくシフトさせています」(岡田氏)
「統合ソリューション提供人材」に必要なのは、スキルだけではない。むしろ、その土台となる「マインド」こそが重要だと、人材開発部で採用と教育・研修をリードする梶真貴子氏は語る。
「スキルは後からでも育成できますが、変化の激しい環境で主体的に成長しようとするマインドが何より重要です。だからこそ採用においては、自己成長意欲の高い姿勢を持ち、多様な挑戦に粘り強く取り組んできた経験を持つ方を求めています」(梶氏)
東急エージェンシー コーポレート本部 人事局 人材開発部 梶真貴子 氏
このマインドを育むため、研修体系も大きく見直した。2024年からは、専門スキルは部門ごとに、人事部は「マインド系」の研修に注力。ヤフー(現LINEヤフー)人事責任者などを歴任した本間浩輔氏をHRXアドバイザーに迎え、リーダーシップやメンバーシップを学ぶ「シップ系」研修を内製で実施している。答えを教えるのではなく、自ら主体的に考えて答えを導き出す、アクティブラーニング形式の研修に力を入れています。社員の満足度も高いですね」(加藤氏)
マーケティング視点の採用でミスマッチを防ぐ
HRXの思想は、採用活動にも色濃く反映されている。特に新卒採用では、「人が成長 できる会社」というメッセージを軸に、マーケティングのアプローチを全面的に導入した。
「まずは『東急エージェンシー』という会社のブランド価値を、現場スタッフと人事がワークショップを重ねて再定義。その上で、学生のインサイトを捉える最適なコンセプトを立て、認知から内定、採用までのファネルを設計し、どこを改善すべきかPDCAを回しながら、採用活動全体を進めています。AIも活用し、効果の最大化を図った結果、内定辞退率はこの3年で大幅に低下し、入社後の早期離職率も極めて低い水準を維持できています」(梶氏)
若手社員が中心に企画・制作している採用サイトもユニークだ。「キミという傑作を、育てよう」というメッセージを掲げ、実話を基にした漫画で仕事内容を紹介。成功体験だけでなく、新人の失敗や葛藤といった「成長のプロセス」をリアルに描写することで学生の共感を呼び、応募者の質の向上にも寄与しているという。
東急エージェンシーの新卒採用サイト(2027年卒向け)
「入社前後のギャップをなくすことが、離職率の低下に最もつながると考えています。選考フェーズごとに、その時々で学生のみなさんが求める情報を伝え続け、入社後も主体的にキャリアを考える機会を提供する。この一貫したサポートが我々の強みです」(梶氏)
新卒採用サイト制作チーム
採用職種も、東急グループの総合広告会社として、まちづくりや数多くの複合施設・店舗開発に強みを持つ独自性を反映。「ビジネスイノベーション(総合職)」や「データスペシャリスト」、「クリエイティブ」のコースに加え、商空間のデザイン・設計やイベント空間のプロデュースを担う「空間クリエイションコース」も設けている。
「当社の強みである空間創造事業やリアルメディア事業の将来を担う、建築学科を卒業した専門性の高い学生さんなどにも積極的にアプローチしています。一方で、キャリア採用ではこれらの分野の高い専門性をお持ちの方を中心に採用を進めており、若手の育成と外部知見の融合を図っています」(梶氏)
「一人ひとりを育てる」「よってたかって人を育てる」という強い意志のもと、採用から育成、評価までを一貫した哲学で貫く東急エージェンシー。最後に、未来の仲間に向けたメッセージを加藤氏が語った。
「未来を想像して、様々な分野を探求し、複数の専門性を統合的に活用して解決策を導き出す人材を、育てていきたいと考えています。人事施策はすぐに結果が見えるものではありませんが、3年、5年先を見据え、会社の未来を創る人材への投資を、私たちはこれからも続けていきます」(加藤氏)
お問い合わせ
株式会社東急エージェンシー
住所:〒105-0003東京都港区西新橋1-1-1日比谷フォートタワー
Mail:kouhou@tokyu-agc.co.jp
採用情報ページはこちら
https://www.tokyu-agc.co.jp/recruit/





