生成AIの活用が広がり、企業の情報発信はかつてないほど効率化されています。一方で、どの国のPR現場でも共通して聞かれるのが、「では、人が語る意味はどこにあるのか」という問いです。自動生成された文章や定型的なメッセージがあふれる時代だからこそ、誰が、どの立場で、どんな経験をもとに語るのかが、企業の信頼を左右する要素として再び注目されるようになってきました。
そうした流れの中で、イタリア発の興味深い実践として紹介したいのが、菓子メーカー Perfetti Van Melle におけるエンプロイー・アドボカシー(従業員による自社擁護)を進化させたPRの取り組みです。
コンサル型から「仕組み」へ──7年越しの転換
Perfetti Van Melleでは、長年にわたり社員アンバサダー施策に取り組んできました。社内から参加者を選抜し、ワークショップでトレーニングを行い、企業理解や発信ルールを共有する。いわば典型的なコンサルティング型のアンバサダープログラムです。この方法は一定の成果を上げてきたものの、運営は属人的で、成果の可視化やスケールには限界がありました。
そこで同社が選んだのが、プログラムそのものを「測定可能で再現性のある仕組み」に転換することでした。この設計を担ったのが、ミラノを拠点とするコミュニケーション・コンサルティング会社 L45 です。
「360度」の意味を再定義するアンバサダー像
L45が設計した「Ambassador 360」という仕組みは、社員アンバサダーを単なるSNS投稿者として扱いません。オンラインでの発信に加え、採用イベントへの参加、社内オンボーディング、社外イベントへの登壇など、オフラインの行動も含めた“企業を体現する存在”として再定義しました。
重要なのは、それぞれの行動にポイントを付与し、段階的な役割や称号を設けた点です。社員は「何をすればよいか」が明確になり、企業側は発信や参加の状況を横断的に把握できるようになりました。ここでPRは、メッセージを管理する機能から、「社員の行動を設計し、可視化する機能」へと拡張されています。
エンプロイー・アドボカシープログラムの参加者(L45提供)
