(左から)湯島天満宮 権禰宜 河村美雨氏、パス・コミュニケーションズ 営業本部 第一営業部 プランナー 新井勇輝氏
視覚的な情報を届けることでスムーズな参拝を促す
――湯島天満宮に大型ビジョンを設置し、2026年の初詣時期に合わせた「初詣協賛ビジョン」の放映に至った背景を教えてください。
河村: 最大の目的は、参拝される方々の「安全確保」と「スムーズな誘導」にあります。正月三が日は数十万人という方がお見えになり、境内が非常に混雑するため、列の整理や交通規制が不可欠です。これまでは警備員による声の誘導が中心でしたが、境内で大きな声をあげての誘導は適切ではなく、視覚的に正確な情報をリアルタイムで届けることで、参拝者の皆さまにより清々しい気持ちでお参りいただきたいと考えたのがきっかけです。
新井:当社はこれまでも、鶴岡八幡宮や太宰府天満宮などの神社にて「初詣協賛ビジョン」の運営実績があり、そのノウハウを湯島天満宮という場所でも活かしたいと考えていました。神社側に設置コストをご負担いただくのではなく、企業の協賛広告を組み合わせることで、参拝時の安全運営をサポートしつつ、企業にとっても価値あるメッセージ発信の場をつくるという「三方良し」のモデルを提案させていただきました。
わずか10日で想定以上の反響が意外な企業からの賛同も
――湯島天満宮は「学問の神様」として非常に高い知名度を誇ります。この特別な媒体の具体的な特徴をお聞かせください。
新井: 実は協賛の募集を開始したのは12月中旬からと、非常にタイトなスケジュールでした。しかし、わずか10日ほどで多くの問い合わせをいただきました。「湯島天満宮」という場所が持つ圧倒的な信頼度と、受験生やそのご家族が数多く集まるという、ターゲットの明確さが背景にあると感じています。
――どのような業種のクライアントに支持されたのでしょうか。
新井: やはり受験生応援に親和性の高い教育関連をはじめ、受験シーズンの体調管理を訴求する飲料・食品メーカーや学校などが中心でした。また、IT系のセール告知など、一見意外な業種のクライアントの方々からも「歴史ある湯島天満宮という特別な場所を通じてお正月にメッセージを届けたい」と多くのご賛同をいただきました。
河村: 放映内容についても工夫を凝らしました。単なる誘導案内や広告だけでなく、湯島天満宮が大切にしている「うそ替え神事」や「節分祭」、「梅まつり」といった季節の祭事映像を美しく流すことで、参拝の方々に神社の伝統や日本の四季をより身近に感じていただける構成にしました【画像】。
大型ビジョン(上)と、実際に放映された映像の一部(下)。単なる広告媒体としてではなく、参拝客に対して情報を届け、1月の初詣・開運神事、2月の節分祭、開催中の梅まつりなど、伝統行事を視覚的に伝える役割を担った。これらのコンテンツは、神聖な場での情報発信として、神社側とパス・コミュニケーションズの間で慎重な対話が重ねられた上で制作されている。
温かみのあるクリエイティブを徹底
――神社という神聖な場での情報発信として、両者の間でどのような工夫があったのでしょうか。
河村: 設置場所が住宅地にも隣接しているため、騒音対策には非常に細心の注意を払いました。パス・コミュニケーションズさんと協議を重ね、音声を出す際も指向性スピーカーを使用して特定の方向にのみ届くようにして、近隣住民の方々の生活環境を守る配慮を徹底。その結果、近隣の方や警察関係の方からも「非常にスムーズな誘導だった」とポジティブな評価をいただけました。
新井: 私たちも、通常の「広告枠」の販売とは考えていませんでした。神聖な境内において、どのような色調や内容がふさわしいか、微調整を繰り返しました。特に、受験生にとってネガティブな連想をさせる「落ちる」「滑る」といった表現は丁寧に排除。神社と企業が共に、訪れた人々の幸せや合格を願う、温かみのあるクリエイティブ管理を徹底しました。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
新井: 今回、クライアントの皆さまから「来年以降も継続して協賛したい」という声も多くいただきました。この取り組みを5年、10年と継続していくことで、湯島天満宮の初詣における新しい価値として定着させたいと考えています。企業と共に参拝客の皆さまへ、さらなる利便性と感動を届けられる媒体へと成長させていくことが目標です。
河村:神社は人々の祈りを受け止め、歴史をつないでいく場所です。今回のようなデジタル技術を活用した情報発信も、参拝される方々の安全を守り、清らかな気持ちで新年を迎えていただくためのひとつの助けになると確信しました。これからもパス・コミュニケーションズさんと密な対話を重ね、神社の大切な価値を守りながら、時代の変化に合わせた新しい形で皆さまにお気持ちを届けていきたいと考えています。

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