手芸・ホビー関連市場は、コロナ禍における「おうち時間」の増加を契機に、欧米をはじめ世界的な拡大を見せてきた。Z世代を中心にデジタルデトックスやスローライフを志向する動きが定着。日本国内においても、アイドルによるSNSでの編み物作品の発信をきっかけに、2024年頃から若年層の間でファッション性の高いカルチャーとして再評価された。韓国発の「マンドゥバッグ」やバケットハット、スマホショルダーといった小物のトレンドが浸透し、編み物はシーズンを問わない通年の趣味へと変貌を遂げている。
こうした流れのなか、パルが運営する「3COINS(スリーコインズ)」は2026年5月、「ホビ活・編み物シリーズ」をローンチした。トレンドへの感度が高く、若年層を中心に広い支持を持つ同ブランドがこの時期に本格参入したことは、春夏の編み物が一過性のブームを超え、ライフスタイルとして定着しつつあることを示す象徴的な動きといえる。「編み物=冬」という消費者の先入観が根強く残るなか、あえてこのタイミングを選んだ意思決定の裏には何があったのか。同社3COINS商品部の中田美穂氏に話を聞いた。
同社Webサイトより。
100均でも専門店でもない「300円」のポジショニング
3COINSが編み物カテゴリーへの参入を決めた背景には、同ブランドの既存顧客の特性と、市場における価格帯の空白地帯があった。参入の経緯について中田氏はこう説明する。
「『編み物=冬の趣味』というイメージがあった中で、近年の編み物ブームにより世間の認識、需要も変わってきているなと感じていました。また、3COINSのお客さまは『推し活』をはじめホビー領域に対して関心の高い客層ということもあり、手芸、編み物はぜひ挑戦してみたいカテゴリーでした」。
低価格帯の手芸市場にはすでに100円均一ショップが広く定着しており、一方で本格的な趣味層には手芸専門店や毛糸専門店が存在する。その中間を狙うにあたり、価格設定には独自の工夫が求められた。
