ヒューマノイドAIは「研究」から「運用」へ 日本企業が示した社会実装の現在地

ヒューマノイドロボットに特化した国際カンファレンス「Humanoids Summit Tokyo 2026」が5月28、29日に東京・高輪ゲートウェイコンベンションセンターで開かれた。28日の講演では、ヒューマノイドAIの社会実装に向けて、機体開発に加え、現場データ、運用、保守、制度設計などの論点が語られた。

GMO AIRは「ロボットを動かすインフラ」を担う

GMO AIR代表取締役社長の内田朋宏氏は、「ヒューマノイド元年」をテーマに登壇した。同社の立ち位置は、ロボット本体を自社で製造することではない。GMOインターネットグループがこれまでインターネットインフラを提供してきたように、今後はロボティクスのインフラを提供する会社へ進化したいと説明した。日本で動くロボットの運用インフラに、何らかのGMOインターネットグループの商材が組み込まれている状態を目指すという。

5月から、JAL、JALグランドサービス、GMO AIRは羽田空港でヒューマノイドロボット活用に向けた実証実験を行っている

ロボットが社会で動くには、機体だけでは足りない。通信回線、セキュリティ、GPU、導入のための金融機能、保守体制が必要になる。GMO AIRは、機体を現場に合わせてチューニングし、困った時のサポートまで担う構想を描く。

取材に対し、同社担当者は、現段階では収益化よりも認知度の向上を重視していると説明した。まずは日本でヒューマノイドへの関心を高め、実証を重ねる段階だという。実用化に向けては2028年ごろまで検証を重ね、2029年ごろから外部での活用が見えてくるという時間軸も示された。

象徴的な事例が、JALグループとの羽田空港での実証実験だ。2026年5月から約3年間、まずはコンテナ移送業務から実験を始める。訪日客が増え、働き手が減る中、空港業務では人手不足への対応が課題になっている。

GMO AIRは、ロボットを納入して終わりではなく、運用、セキュアな通信、メンテナンスまで含めて並走するパートナーを目指す。

一方で、社会実装には制度面の課題も残る。取材では、ヒューマノイドに関する法律上の扱いがまだ明確ではないことも課題として挙がった。たとえば公道での歩行など、既存の制度に当てはめにくい場面があるという。

トヨタは「踊るロボット」より、まず工場へ

トヨタ自動車 ヒューマノイドロボット研究ユニット長の能見智宏氏は、同社のヒューマノイド開発を「身体性」「実用性」「社会性」の3軸で紹介した。象徴的な事例が、バスケットボールロボット「CUE」シリーズだ。最新のCUE7では、約1万人の観客がいるアリーナという不確実な環境で、走行、ドリブル、シュートを一連のパフォーマンスとして実施した。単なるデモではなく、実環境でフィジカルAIの性能を試すストレステストとして位置づけている。

CUEの出発点は、同社の有志による活動にある。もともとは勤務時間外の活動として始まったが、2018年から業務として継続することになった。取材では、開発の着想として、AIに大量のデータが必要だと知った際、漫画『SLAM DUNK』に登場する「2万本のシュート練習」を想起した結果、バスケットボールロボットを開発したというエピソードも明かされた。

トヨタ自動車の能見氏は、世界中に工場を持つトヨタの環境を生かして、まず「欲しい」と思えるロボット作りを進めるという

一方で、同社がまず重視するのは、ロボットの動きを見せること自体ではなく、現場で使える実用性だ。能見氏は、実用化について「トヨタの強みを活かして自社工場から始める」と説明した。動くだけでは「欲しい」とはならず、人の作業を代替するには大きなハードルがあるという。家庭向けロボットは究極的な目標ではあるが、「最後の最後」だとし、まずは導入ニーズがあり、環境も整えやすい工場から始める考えを示した。

実際、同社は自社工場を実用化の足場としている。世界中に製造現場があり、ロボットの学習に必要な作業データや導入ニーズ、現場で改善を担う人材があることを強みに挙げた。現段階では、現場で十分に稼働できる成功率にはまだ至っていないが、今後は工場の作業データをもとに「ファクトリー基盤モデル」を構築し、工場で得たノウハウを他領域にも広げる構想だ。

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